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2014-03-24 00:00
ウクライナ紛争と北方領土交渉
飯島 一孝
ジャーナリスト
ロシアは欧米諸国の厳しい批判を無視して、ウクライナ南部のクリミヤ半島を自国領に編入した。今回の紛争でロシアは第二次大戦後の世界の枠組みを一方的に崩したわけだが、これが許されるなら領土交渉は無意味になるとの見方もある。この紛争が今後の北方領土交渉にどう影響を考えてみたい。この紛争が起きた際、北方領土交渉に詳しい元外務省主任分析官、佐藤優氏は毎日新聞の取材にこう答えている。「ロシアがクリミヤに介入しているのは、クリミヤのロシア系住民の保護が名目です。その論理に従ってクリミヤがロシアに編入されるなら、仮に安倍政権とプーチン政権との間で北方領土問題が『解決』したとしてもなんの意味もないことになる。なぜなら、ロシア系住民がロシア政府に『日本のやり方に不満がある』と訴えた場合、ロシアは住民保護を名目に軍を介入させてくると見なければならないからです」と。
つまり、国際法などを無視して領土を拡大させる国とは、どんな約束を交わしても履行される保証がないからだという。確かに、ロシアがクリミヤ編入を決めた後では北方領土交渉そのものが無意味になってしまうという考え方も一理ある。その一方、下斗米伸夫・法大教授(ロシア政治)は、プーチン大統領がクリミヤ編入を決めた会見で「ロシアの固有の領土を取り戻した」と言ったことを重視し、「必ずしも固有でない北方領土を手放してもナショナリストから批判される理由がなくなる。その意味では、プーチン氏は日本とのカードを切りやすくなった」と語り、むしろ好機だとみている(21日付け毎日朝刊「ロシア、クリミヤ編入表明緊急座談会」)。
これに対し、黒川祐次・日大教授(国際政治)は「今の状態が続いていたら、(プーチン氏招請で)欧米にどういうメッセージを与えるのかを考えれば、招くのは難しい」と述べている。プーチン大統領は今秋来日することが決まっているが、黒川教授は今回の紛争で来日が危うくなる可能性を示唆している。安倍政権はプーチン大統領との今秋の首脳会談を「北方領土解決への重要な会談」とみなし、今回の紛争が北方領土問題に悪影響を与えないよう苦慮している。今のところ、米欧などと共同歩調を取りながらも、決定的に対立しないよう配慮しているが、今後の情勢によっては来日延期ということにもなりかねない。
この座談会で宮家邦彦キヤノングローバル戦略研究所研究主幹は「日本が本当にプーチン大統領との関係を重視し始めれば、米国にとっては頭痛の種になる可能性はある」と述べている。米露関係がさらに悪化すると、日本が日米同盟か日露関係かのどちらかを選ばざるを得ない展開もあるということだろう。プーチン政権が今後、北方領土問題にどう対応するのか見えてこないが、クリミヤの編入を決めたことでロシア国民のナショナリズムが最高潮に達しているだけに、領土交渉は一層難しくなるだろう。いずれにしろ、日本政府は今後の情勢を注視するとともに、日本の国益を慎重に判断しながら行動せざるを得ない。まさに日本の外交力が問われる局面だ。
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