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2014-03-11 00:00
(連載1)ロシアのウクライナ戦略と将来のシナリオ
六鹿 茂夫
GFJ「日・黒海地域関係研究会」代表
ロシアのウクライナ政策を考察するうえで、有益なモデルが2つある。グルジアとモルドヴァに対するロシアの外交政策である。小論では、これら2カ国に対するロシアの外交安全保障政策を振り返りながら、ロシアのウクライナ戦略と今後のシナリオについて考察したい。
ロシアは旧ソ連圏諸国を自国の勢力圏に留めるために、エネルギー外交、マスメディアを使った宣伝戦、財政支援や経済制裁などアメとムチの政策に加え、所謂「凍結された紛争」を巧みに利用してきた。周知のごとく、グルジアはアブハジアと南オセチア、モルドヴァはトランスニストリア、アゼルバイジャンはナゴルノ・カラバフ問題を抱える。ロシアは、民主的で親欧米的と言われたエリツィン政権も含め、公式にはこれら三カ国の領土保全政策を支持しつつ、非公式に分離主義勢力を支援するという二元外交を展開してきた。同政策により、分離主義勢力のみならず、本国政府も、領土保全を達成するにはロシアに依存せざるを得なくなるため、ロシアは上記3カ国に対する影響力の強化を図ることができたのである。
ところが、ロシアの「近い外国」に親欧米政権が誕生し、NATOないしEUとの関係強化が決定的段階を迎えると、ロシアは上記二元外交を転換した。領土保全支持政策を放棄し、公然と分離主義「政府」との公式な外交関係樹立へと向かい、最後は同地域の独立承認へと至ったのである。2008年春から夏に掛けてのロシアの対グルジア政策がその典型である。2008年4月のNATOブカレスト・サミットがウクライナとグルジアの将来のNATO加盟を宣言すると、プーチン大統領は直ちに大統領令を発して、分離主義勢力との公式な外交関係樹立へと向かい、グルジアの領土保全支持政策を撤回した。そして、アブハジアにロシア軍を増派し、北コーカサスで大規模な軍事演習を行うなどグルジア政府に圧力を掛け続け、グルジア軍が南オセチアに侵攻すると、ロシアはロシア系住民の保護を名目に大規模な軍事作戦を開始した。
戦闘目的はサーカシヴィリ政権の打倒であったが、欧米諸国の抗議とEU議長国フランスの仲介によって戦争の継続が困難となり、同目的の達成が難しくなると、ロシアはアブハジアと南オセチアの独立承認という挙に出た。そして、ロシア政府は、8月31日に「どこにいようとも市民を保護する」とのメドヴェージェフ・ドクトリンを発して、近隣諸国に軍事介入する意思と根拠を明確にした。また、ロシアは、グルジアとの停戦合意を無視して、ロシア軍を両地域に駐留させ続け、国連、OSCE、EU監視団の同地域への受け入れを拒んできた。
もう一つのモデルは、コザック・メモランダムの名で知られるロシア版トランスニストリア問題解決案である。ロシア大統領府のコザック氏は、モルドヴァのヴォローニン大統領の依頼を受け、シャトル外交を介して同案を練り上げ、2003年11月に公表した。同メモランダムは、モルドヴァを連邦化し、トランスニストリアとガガウズに大幅な自治を与えることで、モルドヴァのロシアへの従属と中立(すなわちNATO加盟阻止)を未来永劫的に確保することを目的としていた。詳しくは、拙稿「拡大後のEUが抱えるもう一つの難題」(『外交フォーラム』2004年7月号)
を参照ありたい。(つづく)
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