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2014-03-05 00:00
プーチン大統領はクリミヤ半島のロシア帰属化を狙っている
飯島 一孝
ジャーナリスト
ウクライナの政治危機は、親ロシア派のヤヌコビッチ政権が崩壊、野党主導による新政権が発足したことから、ロシア系住民が多いクリミヤ半島の分離・独立問題に焦点が移ってきた。クリミヤのロシア系住民はロシアとの統合を求めており、プーチン大統領もクリミヤのロシア帰属化を狙っているとの見方が出ている。クリミヤは黒海に突き出た半島で、古くからロシア人の保養地として知られている。新潟県と長野県を合わせた地域に、約200万人が住んでいるが、その6割はロシア系住民だ。元々はオスマン・トルコ帝国の勢力下にあったが、18世紀後半に帝政ロシアが自国領に組み込み、黒海艦隊を編成した。
ソ連になってから、スターリン批判で知られるフルシチョフ共産党書記長がクリミヤ半島をロシア共和国からウクライナ共和国に編入した。第2次大戦で荒廃したウクライナにテコ入れするためといわれている。ところが、ソ連崩壊でウクライナが独立すると、少数派のロシア系住民による独立運動が激化し、一時は地方議会が独立を宣言する事態に発展した。もうひとつの火種は、旧ソ連の黒海艦隊がクリミヤ半島に駐留していることだ。ロシアはウクライナから艦隊の母港、セバストポリ軍港を期限付きで借りていて、ヤヌコビッチ政権になってから42年まで25年間の租借期間延長で合意している。
今回の政治危機で親欧米派のウクライナ新政権が成立したことから、クリミヤのロシア系住民の間で新政権への不信感が高まり、再び分離・独立の動きが強まっている。地方議会はウクライナ大統領選の繰り上げ投票が行われる5月25日にクリミヤの地位に関する住民投票の実施を決めた(その後3月30日に繰り上げ)。ロシアの中立系独立新聞は28日付けの電子版で、「プーチンのクリミヤ計画」と題する記事を掲載し、住民投票で分離・独立支持派が多数を占めるのを契機に、クリミヤ半島をロシア領に組み入れる計画を進めていると伝えている。
また、ロシア下院でも、プーチン大統領支持の公正ロシア党が住民投票の結果により国際条約抜きで外国の一部を自国領とする法案を提出した。これはクリミヤを想定して作成した法案で、プーチン政権と意見調整して提出したとみられている。プーチン政権は08年8月のグルジア戦争でも、ロシア系住民の保護を理由にグルジア領に軍隊を導入、首都トビリシ近くまで攻め込んだ経緯がある。今回もクリミヤの独立問題を巡って、ロシアとウクライナとの軍事衝突が懸念されている。米国や欧州諸国が軍事衝突回避のため積極的に動かなければ、グルジア戦争の二の舞となりかねない情勢だ。
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