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2014-02-25 00:00
ティモシェンコ元首相はウクライナの救世主になれるか
飯島 一孝
ジャーナリスト
欧州連合(EU)との統合をめぐる内紛から政治危機が続くウクライナでは、ヤヌコビッチ政権が崩壊、野党主導による新政権に移行することになった。ここでクローズアップされてきたのは、オレンジ革命の立役者の1人、ティモシェンコ元首相(53)である。首相か大統領になるのはほぼ確実とみられているが、ウクライナの真の救世主になれるだろうか。美人で聡明、経営者の経験もあり、04年の民主化運動では「オレンジ革命のジャンヌダルク」とも呼ばれた。10年の大統領選では、親ロシアのヤヌコビッチ氏との一騎打ちになり、決選投票で敗れた。ティモシェンコ陣営は「不正選挙が行われた」と主張、裁判闘争に持ち込んだが、途中で訴えを取り下げた。
その後も、ヤヌコビッチ政権と激しく敵対したことから、首相時代のロシアとのガス契約交渉を巡って政権側に職権乱用罪で起訴された。11年10月、裁判所は職権乱用罪を認定して禁錮7年の実刑判決を言い渡した。政権側が判決後も保釈を認めなかったため、EUはウクライナの加盟につながる「連合協定」への調印を渋った経緯がある。ティモシェンコ氏は22日、特別立法により収監先の東部ハリコフで釈放されると直ちに首都キエフに入り、デモ隊が集まる独立広場で演説。「これまでと違う政治を目指す」と述べ、政治活動への復帰を宣言した。5月の繰り上げ大統領選に立候補する意向を示したと伝えられたが、本人は「まだその時期ではない」と明言しなかったという。
ヤヌコビッチ政権が崩壊したことから、野党側は政権の受け皿つくりに動いているが、親欧米派の中で政治家としての経験が豊富で、外国の首脳と直に交渉できる指導者は数少なく、ティモシェンコ氏が最適という声が国会内で強まっている。だが、デモ隊の中には、過去2回の首相時代に実績を残せなかった同氏に不満を抱く人も少なくない。24日付けのロシア紙「独立新聞」(電子版)によると、ティモシェンコ氏が首相か大統領に就任するのは確実とみられている。本人は大統領就任に執念を燃やしているとみられるが、9月までに大統領権限を弱める新憲法が採択されることになっていて、首相の権限が強化される見通しである。このため25日に開かれる予定の国会で、同氏が首相に就任する可能性もある。
この他、最大野党「祖国」を率いるヤツェニュク氏、野党第2党「ウダル」のクリチコ党首らも首相候補に挙がっている。だが、財政破綻の瀬戸際に立つウクライナは、欧州だけでなく、ロシアとも交渉できる人物でなければ「国家存亡の危機」を乗り切れない。政界では、プーチン大統領とも渡り合えるティモシェンコ氏への期待が高まっているが、デモ隊など市民がどういう反応を示すかは不透明である。
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