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2014-02-24 00:00
安倍は極右側近ときっぱりと一線を画せ
杉浦 正章
政治評論家
小生がやっているような評論は「先読み」なくしてなり立たない。マスコミと同じ読みでは、読者はついてこない。マスコミより最低2日は先行することと、大局を詠むことをモットーに、昼夜を分かたず情報を集め、分析してきた。2月20日の側近らのずっこけ発言を論評した「身から出たさびが、ひいきの引き倒し」は、3日遅れで新聞テレビが追随した。一部には「愚鈍発言」の連鎖のスパイラルで政局化までささやかれ始めたが、今度も再び先行して予想する。政局化はあり得ず、安倍政権は継続する。幹事長・石破茂も「足を引っ張らない」と明言した。もっとも長期政権を目指すなら、「路線修正」が不可欠だ。それは米国の政府やマスコミによる「安倍の極右化」の誤解を解き、同盟関係を確たるものに再構築できるかどうかだ。政局を見る方法はいくつかのキーポイントがある。一つは、政権に対する野党の反発がどの程度か、また自民党内で不穏な動きがナンバー2などから聞こえてくるかこないかだ。そこで野党の安倍批判をみると、目立つのは生活の党代表・小沢一郎と、元首相・菅直人くらいだ。二人ともまだ政治の舞台にいたかと思いたくなるが、小沢は安倍政権について「民主党政権以上に危険な政権」と語り、対決姿勢を鮮明にした。また「一強多弱の政治状況を受けて、野党の中に権力にすり寄る雰囲気が見られるのは非常に危険」とみんなと維新を批判した。
これに対して維新幹部は「引かれ者の小唄と言っては失礼かなぁ」と、失礼を承知の侮辱発言。全く意に介されなくなった。小沢は権力を振るった全盛期の夢を追ってももう無理だ。もっとしゃしゃり出ているのが菅直人。「安倍政権は保守政権と言うよりナショナリスト政権」と、かっこうよく切った。ワシントン・ポストが誤解に基づいて「安倍は強硬なナショナリズム」と書いたのを、菅は受け売りしてはいけない。ネタ源などすぐに看破できる。加えて菅は、自らが元首相としては異例の、質問主意書を原発再稼働問題で提出したまでは良かったが、事実誤認でずっこけた。「規制委員会が再稼働を認可することができる」と質問、政府から答弁書で「規制委が再稼働を認可する規定はない」とやられて、ぎゃふんとなっているはずである。急所である自民党内はどうか。総務会の度にスピッツのように吠えている元行革担当相・村上誠一郎が「首相の発言は、選挙で勝てば憲法を拡大解釈できると理解できる。その時々の政権が解釈を変更できることになる」と非難した。しかし自民党は集団的自衛権の行使容認は野党時代から決めており、関連する「国家安全保障基本法」まで決定していることをお忘れか。中堅議員たる者既に決着済みの議論を声高に叫んではいけない。そこで注目されるのは、総裁選で地方票でトップを獲得して、安倍がナンバー2の座に任命せざるを得なかった石破茂の動向である。
この世界的に「安倍イシュー」が問題になっているときに、ナンバー2が動いたら、政権は間違いなく揺れる。そこで23日早朝のTBSの時事放談を録画して、もれなくメモしてチェックした。ところが石破からはみじんも批判めいた発言や政局めいた発言は聞かれなかった。石破は愚鈍な側近らと安倍を完全に分けて語っていた。石破は、首相補佐官・衛藤晟一、内閣官房参与・本田悦朗、自民党総裁特別補佐・萩生田光一ら安倍の取り巻きグループを批判し、安倍自身は分離して支持したのだ。「撤回するような発言は最初からしない方がよい」と衛藤を切り、「感情的な言葉の応酬で同盟が強くなったり、理解が深まった経験はない」と本田、萩生田を切った。そして「安部さんがこういう考えを持っていないことは、安部さんと話をしてよく理解している」と安倍を擁護した。さらに加えて石破は「国民が望んでいるのは、しょっちゅう総理大臣が代わるのはやめて欲しいと言うことだ。自民党の中で総理の足を引っ張るようなことはやめてくれということ。それを心してやりたい」と「安倍降ろし」を完全否定したのだ。
石破はこのほど「日本人のための集団的自衛権入門」(新潮新書) を出版したが、集団的自衛権の行使をめぐる憲法解釈変更では安倍と完全に波長が合っている。安倍とは集団的自衛権をめぐって運命共同体の色彩が濃厚なのだ。ここで揺さぶりに出るのは、「安保専門家」としての自分が許さないに違いない。加えて今事を起こしても、何のメリットもない。安倍の支持率は依然高水準にあり、幹事長といえども、揚げ足取りによる政局化はまず不可能だ。ここは安倍支持を真っ先に表明して、安倍に“貸し”を作った方がよいに決まっている。したがって、自民党内はさざ波が立っても、大波濤が寄せてくる形勢にはない。しかし、日本の対外政策広報が、安倍周辺の思慮のない発言によって、急がねばならない対中・対韓広報でなく、「安倍イシュウ」広報に当面変質せざるを得ないのは大きなマイナスだ。ここは安倍が、極右の側近とはきっぱりと一線を画して、平衡感覚を維持していることを、世界的に発信しなければならない時であろう。
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