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2006-11-09 00:00
東アジア地域協力とAPEC
大河原 良雄
グローバル・フォーラム代表世話人、世界平和研究所理事長
「米・APEC自由貿易案」、「日本などに検討打診」、「アジア進展に焦り」、10月5日付朝日新聞はこうした大きな見出しの下に、米国務省が「アジア太平洋地域による(多国間の)FTAは簡単ではないが、中長期的な目標として重要なのでその方向性を検討したい」との意向を外務省や経済産業省に伝えて来た旨を報じている。米国は何故焦るのか。以下に問題のありかを検討してみたい。
アジアでは11月19日から21日までハノイでAPEC首脳会議が開催される。更に12月にはフィリッピンのセブで、第2回東アジア・サミット会議の開催が予定されており、夫々の場でアジアの地域協力及至は地域統合の問題が従来に比しより具体的な議論の対象として登場して来るものと予想される。
昨年12月にマレーシアのクアラルンプールで開催された第1回東アジア・サミット会議では、参加国をマレーシアや中国の主張するASEAN+3(日中韓)とするか、日本がインドネシアと共に提案したASEAN+3+3(印度、豪州、ニュージーランド)とするかで厳しい折衝を経て、ASEAN+3+3となった経緯は、私達の記憶に新しい。今回の第2回東アジア・サミットは、ASEAN+6の参加する会議となるであろうが、ロシアその他オブザーバーとしての参加を希望する国の扱いが、当面の課題の一つである。
ASEAN+3は、本年で創設以来10年を迎えるが、地域協力の組織としての実績を背景として地域内でそれなりの存在感を示すに到っている。先般の安倍新首相の訪中により中国との戦略的互恵関係の推進を、次いで訪韓によって未来志向の友好関係構築への努力を夫々合意されたことは日本のアジア外交にとって大きな前進であり、これまで日中、日韓両国首脳間の交流が途絶し、ギスギスした関係が続いていた日中・日韓両国関係にとって、明るい前向きの交流の途が開かれることの意義は深く、ASEAN+3会合は地域協力組織としてこれまでに比しより存在感を示す枠組みとなることが期待される。
上述の様な東アジア地域協力乃至統合の動きの中で終始問題とされて来たのは米国の位置づけであった。米国は90年代初めにマレーシアの東アジア経済会議(EAEC)構想に反対し、1997年のアジア通貨危機後に日本の提唱したアジア通貨基金(AMF)構想をも挫折せしめた。米国は第1回東アジア・サミット会議に例えばオブザーバーとして参加することを内々に求められたが、これを拒否し、アジアの動きを注意深く見守る姿勢を崩さなかった。然し米国が例えばAPECの如く自らの参加する地域的協力組織の活性化乃至再生化を通じて、この地域に関与し続ける道を見出そうとするのは必至の事と見られて来た。
冒頭に引用した米国の「APEC自由貿易案」は、最近のアジアにおける関係各国によるFTA締結による貿易の自由化促進の動きに乗って、これまでAPECが主たる目標として来たAPEC諸国の市場の自由化を新しい視点から取り組むことによって、米国主導のアジア地域の域内協力を実現しようとする意図によるものとみてよいであろう。1990年代半ばまで米国の主導するAPECの市場の自由化の流れが、国内産業の保護を求める各国の抵抗によって逐次その推進力を失い、APECの勢いが失速した経緯からみて、米国の新しい提案に対して如何なる方向づけが出来るか、十分な注視が必要である。これとの関連で2001年の9・11後に上海で開催されたAPEC首脳会議を契機として、それまで経済分野での協力の話し合いの場として位置づけられていたAPECが、政治問題をも含むより広い分野を対象とする組織として変容して来た経緯についても、しっかりと認識しておくことが必要である
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