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2014-01-30 00:00
EUでの再生可能エネルギーの地位低下ー欧州委員会の政策目標から
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
欧州委員会は、1月22日に、2030年に向けた温室効果ガス削減目標とそれに関する一連の施策に関する政策文書を発表した。その柱は、既に報じられている通り、EUは、2030年までに温室効果ガスを1990年比で40%削減すること、再生可能エネルギーの割合を2030年に27%まで向上させること、である。EUは、2020年までの目標として、温室効果ガス削減については90年比で20%削減し、再生可能エネルギーの割合は20%にすることを掲げている。数字だけを見れば、2030年における温室効果ガス削減目標を40%に大幅に拡大したことが、確かに目を引く。
ただ、それよりも注目に値するのは、2030年における再生可能エネルギーの割合の目標はEU全体としてのものであり、2020年目標とは異なり、国別の義務は課さない点である。政策文書は、各加盟国はそれぞれの状況に最適な方法で再生エネルギー導入を進める、としている。このことは、欧州が「再生可能エネルギー至上主義」と訣別しつつあることを意味する。国別の義務を課さずにEU全体での目標を達成するというのは、事実上不可能に近い。政策文書によれば、再生可能エネルギーの拡大の目的は、EU原産エネルギー資源への移行により、エネルギー貿易収支を改善し、雇用と経済成長にメリットをもたらすことである。再生可能エネルギーがそういうエネルギー戦略に貢献しないのであれば、これにこだわることは合理的ではない、とEUが考えたとしても不思議ではない。
2030年目標が国別義務を諦めたのは、再生可能エネルギーのコストが低下せず、経済に与える負の影響が大きくなる一方だからである。特に英仏が難色を示していた。欧州員会が最近発表したレポートは、EUの産業用電気料金は、米国の2倍以上であり、中国より約2割高い、と指摘している。欧州の電気料金が上昇を始めたのは2000年代からであり、再生可能エネルギーの導入が活発化した時期と一致している。おそらく、今後は欧州でも、再生可能エネルギーの地位が相対的に低下し、原子力、クリーンコールが柱となり、そして、場合によってはシェールガスが脚光を浴びるということになると思われる。
日本は、元来、電気料金が高いが、原発の停止に伴う火力発電による代替により、米国の2倍を大きく上回る事態となっている。原発の再稼働を順次進めるとしても、状況が一気に好転するわけではない。そこに、高コストの再生可能エネルギー導入を進めれば、どうなるかは明らかであろう。策定がずれ込んでいる、我が国のエネルギー基本計画では、欧州が経験している再生可能エネルギーの影の部分をよく教訓とし、再生エネルギーの割合の無理な向上を戒め、原発については、依存度を最小限にするというのではなく、復権の方向性を明確にすべきである。
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