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2013-12-03 00:00
大音量のデモは民主政治破壊の元凶だ
杉浦 正章
政治評論家
問題は、狂ったように大音量のスピーカーで国会審議を妨害し、首相官邸の執務の邪魔をし、議員会館での仕事を出来なくすることが、憲法にのっとった集会の自由と合致するかだ。朝日が扇動して、野党がこれにまる乗りした石破発言問題は、たしかに言い過ぎの側面はあるが、事の本質は、国民全体から見れば、少数のデモで国政全体を妨害している事がよいのかという一点に絞られる。いたずらに言葉尻をあげつらい、特定秘密保護法案批判に結びつけて、かさにかかって攻勢を仕掛ける方が代議制民主主義を冒涜しているのではないか。たしかに国会周辺を取り巻くデモは、大音量のスピーカーでがなり立て、静粛さを必要とする国会周辺の秩序を大きく毀損している。筆者も、議員会館で議員と会話をしても、相手の声が聞き取れないほどであり、なぜ放置しておくのかと言いたくなる。その左翼の挑発に対して石破は、普段は極めて論理的であるのに、感情に流れた表現をしてしまった。「絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われる」などという扇情的な表現をしてしまったのだ。石破も冷静に考えれば、昔右翼の街宣車対策で成立させた「国会周辺静穏保持法」があることを失念しているのだろう。
同法は警察官が大音響の拡声機を使用している者に対して、拡声機の使用をやめるように命ずることができると規定している。警察官の命令に違反した者は6か月以下の懲役又は20万円以下の罰金の刑事罰となるのだ。石破は同法の適用に何らかの形で言及するだけで、よかったのだ。これを政府があえて適用しないのは、特定秘密保護法案絡みの弾圧と受け取られることを回避したいためだろうが、デモの音量は明らかに忍耐の限度を超している。そもそも民主党は鬼の首を取ったような追及をしているが、自分が政権を取った時には静穏保持法の適用を実行しているではないか。2010年に総務相・片山善博が「右翼がうるさい」として、民主党本部周辺を静穏保持法の適用地域に指定している。首相・野田佳彦も2012年6月に原発反対派のうるさいシュプレヒコールに対して「大きな音だ」と不満げな発言をしている。自らの政権の時はデモに抑圧的に動いておきながら、他党の政権の時は「デモは意志表示の手段だ」(福山哲郎)という身勝手さは、いかんともし難い。
石破が「テロと本質的に変わらない」と記した部分を撤回したものの、「整然と行われるデモや集会は、いかなる主張であっても民主主義にとって望ましいが、一般の人々に畏怖の念を与え、大音量で主張を述べるような手法は、本来あるべき民主主義とは相いれない。民主主義の手法とは異なるように思う」と、デモの不当性を主張したのは当然であり、全く正しい。もっぱら法案阻止の材料として取り上げ、野党を扇動している朝日は12月3日、「秘密保護法案、石破発言で本質あらわ」と題する社説を掲げ、何が何でも石破発言を秘密保護法阻止に結びつけようと躍起になっている。しかしその論旨は粗くて隙だらけだ。「デモは市民の正当な権利であり、代表制民主主義を補う手段」と主張しているが、それは静粛な手段で粛々と行われるデモの場合であろう。国会周辺で今行われている「音声の暴力」のごときデモ活動は、誰が見ても代議制民主主義を補うどころか、これを妨害する手段でしかあり得ない。会話が聞き取れないような大音響を放置すれば、国政も議会制民主主義もなり立たないではないか。
テロに関する情報は、秘密保護法の4つの柱の一つであり、極めて重要なものである。これが朝日の主張するように廃案となれば、世界中のテロリストが、日本の弱い脇腹が判明したとばかりに、サリンや細菌兵器をまいたり、原爆を爆発させるかもしれない。そうなった場合の責任を朝日は取れるのか。一国平和主義でいつまでも寝ぼけたような社説を書いていると喜ぶのは周辺諸国だけだ。それとも相変わらず中国に胡麻でも擦っているのか。防空識別圏の設定という驚くべき暴挙が、秘密保護法をますます必要としている現実を無視するのか。この野党、とりわけ民主、共産、社民と朝日の秘密保護法案での“結託”は、朝日が社是として標榜する不偏不党の精神を自ら踏みにじるものである。大音響での国政妨害デモを礼賛する朝日は、日本の民主主義にとって大きな支障となっており、将来自らに降りかかる問題をはらむことを銘記すべきであろう。
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