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2013-11-28 00:00
ウクライナのEU協定署名中止の真相は
飯島 一孝
ジャーナリスト
ウクライナ政府は21日、将来のEU(欧州連合)加盟への第一歩である「連合協定」への署名中止を発表したが、その理由をめぐって様々な情報が飛び交っている。現地での報道を元に真相に迫ってみた。22日のインタファクス通信は「ウクライナのEUへの統合を経済が邪魔している」との見出しで、ウクライナの経済状態が深刻なことを主な理由に挙げている。これはアザロフ・ウクライナ首相が22日、国会で報告したもので、(1)IMF(国際通貨基金)から家庭の暖房費を40%値上げするよう提案されている、(2)EU側はロシアなどとの関税同盟放棄に伴う損失補填要請に回答していない、などと述べている。
これに対し、野党「祖国」の指導者・ヤツェニュク議員は、ヤヌコビッチ大統領がロシア側と裏取引をして選挙資金を受領したためと指摘している。同議員によると、大統領は200億ドルを受け取り、その半分は15年の次期大統領選に使用されると見ている。一方、バルト三国のリトアニア大統領側近は、ロシアが連合協定に署名させないよう、ウクライナに圧力をかけたためだとみている。グリバウスカイテ大統領の顧問によると、同大統領とヤヌコビッチ大統領が先日電話会談を行った際、ウクライナの大統領自身がプーチン大統領から経済的な脅しを受けていると語っていたという。
当のプーチン大統領は「ウクライナとリトアニアの大統領が何を話し合ったかは知らない。米国の友人から助言を受けたのかもしれないが、私は何も聞いていない」と一蹴し、逆に「欧州がウクライナを脅しているのではないか」と述べたという。この問題でロシア、ウクライナ、EUの三者会談が提案されており、プーチン大統領も参加の意向を示している。だが、EU側は関係国同士で話し合うべきと突き放していて、三者会談が実現するかどうか、現段階でははっきりしない。
こうした情勢を受けて野党側は24日、キエフの独立広場で10万人規模の集会を開き、欧州との統合を促した。すでに21日夜から約2千人が広場に集結、協定署名中止に抗議した。人気ボクサーで、野党「ウダール」代表のクリチコ氏は「ウクライナは欧州に入り、民主国家になる」と語った。ウクライナ政府は「EUに加盟する基本方針に変更はない」と明言しているが、15年の大統領選を控え、今後ウクライナの与野党の動きが活発化することは間違いない。これにロシアが加わると、またウクライナ政界が混乱する恐れもある。両国の政治家の冷静な対応が望まれる。
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