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2013-11-18 00:00
(連載)ローラン・ファビウス仏外相論(1)
緒方 林太郎
前衆議院議員
イラン核問題が相当にこじれています。主役の一人はローラン・ファビウス仏外相です。ファビウス外相はイランの核開発に相当に強硬な姿勢を取ったようです。フランスが問題視しているのは、(1)イラン中部のアラクに建設中の重水炉でのプルトニウム製造(の可能性)、(2)既に20%まで濃縮したウランの存在、(3)更に一般的に濃縮行為という3点だとされています。これに対応がなされない限り、制裁解除等に応じるべきではないということで、P5+1(安保理理事国+ドイツ)の中で際立って強気の姿勢です。
逆に穏健派と言われるイランのロウハニ大統領は「濃縮の権利は絶対に放棄しない」と国内向けに言っており、ファビウス外相との間の乖離は大きいなという気がします。フランスは「今回緩い暫定合意をしてしまったら、その間に核開発が進んでしまう」と言っています。これはオランド大統領の裁可を得ていますが、フランスの左派の中でも左派色が強いファビウス外相ならでは、ということかもしれません。このあたり、外交でも右派、左派の違いが見えるところは、とても興味深いことです(「外交は継続性が大事」という言い回しを唯唯諾諾と受入がちな日本との違いです)。
ただ、今回の交渉不調、アメリカではネオコンや保守派がフランスの強硬姿勢を評価しているというのは奇妙な符合です。マケイン上院議員はツイッターで「Vive la France(フランス、万歳)」とまで書いているのを見ると、イラク戦争で対立した時とはかなり様相を異にしています。欧米の交渉筋は表向きにはノーコメントですが、匿名で「これまで何ヶ月も議論してきたのに、最終盤で出張ってきて、交渉をかき混ぜやがって」とボヤいていて、ついでに「ファビウス外相はメディアに出たがりで、おまけに話し過ぎる」とも言っています。逆にフランス側は、アメリカのケリー国務長官とイランのザリーフ外相間で合意しかかったものに対して、「ケリー国務長官は一度も見たことのない文書を突然P5+1に持ち込んできた」と反発しています。何となく、交渉の取り進めぶりにも混乱があったことを窺わせます。
爾後も、ファビウス外相は相当に厳しいポジションを取っていますね。アメリカ筋が「フランスは孤立している。どうせ、最後は追随してくる」的なことを言ったようですが、これに対してファビウス外相は「フランスは孤立もしてないし、追随者にもならない。フランスは独自の立場で行く」と言いながら、強気の姿勢を貫いています。あまり、ファビウス外相について知らない方も多いでしょうから、ちょっと紹介しておきますと、若い時からフランス左派のホープでした。ミッテラン大統領の秘蔵っ子と言われておりまして、30年前の1984年に37歳で首相をやっています。ナポレオン以来の若い宰相と言われました。ただ、首相在任時のエイズ薬害事件で、政治的なダメージを負いました(服毒の罪で起訴され、最後は無罪でしたが政治的なダメージは大きかったです)。国会議長、社会党第一書記等、有力ポストを歴任しましたが、大統領にはついぞなれませんでしたが、(政治家としては遥か後輩である)オランド大統領としても立てなくてはならない大物です。いずれにせよ、あの外相と議論して勝つのは至難の業です。(つづく)
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