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2013-10-24 00:00
(連載)トルコの中国製ミサイル導入は問題である(2)
河村 洋
外交評論家
トルコと中国のミサイル取引は中国の大々的な武器輸出攻勢を象徴している。SIPRIによれば2012年には中国はイギリスを抜いて世界第5位の武器輸出国になった。偶然にも韓国が中国と同様な取引を行なっているのも、パク・クネ大統領が従来以上にアジア志向の外交政策をとっているためだが、それが日米両国にとって不満の種となっている。事態は中国の武器輸出の「大躍進」にとどまらない。中国は大西洋と太平洋でアメリカの同盟関係に楔を打ち込み、両地域の同盟諸国の中でもウィーケスト・リンクを標的にしている。
戦後日本における鳩山由紀夫氏と同様に、エルドアン氏はトルコ近代史では例外的な首相である。両氏とも自らの国のナショナル・ファンダメンタルズとも言える「脱亜入欧」すなわち西欧諸国の仲間入りによって国力を増強して第一級の文明国になるという思想に異を唱えている。しかし鳩山氏の東アジア共同体という夢は惨めな失敗に終わり、エルドアン氏の中東善隣外交も同様な運命を辿った。
トルコは過ちを繰り返すのか?それはNATO同盟諸国と彼らのウイグル人同胞を苛立たせるだけである。エルドアン氏は中国を強大で頼れるパートナーと思っているのかも知れないが、その国にトルコ近隣への戦力投射能力はない。シリア危機でトルコを支援できるのはアメリカおよびヨーロッパ同盟諸国だけである。エルドアン氏は第二次世界大戦でヒトラーのドイツと同盟したという日本の過ちから教訓を得るべきである。ナチス・ドイツには太平洋地域への戦力投射能力などなかったので、日本は事実上孤立無援で戦争を戦った。
トルコにとって第一のパートナーは欧米であり、いかなる勢力もこれにとって代わるものではない。なればこそAKPは自らの政治理念をヨーロッパのキリスト教民主党と同列に位置付けてイスラム主義に恐怖感を抱くEU世論を宥めようとしているのではないのか。またトルコは人権と少数民族の権利、特にクルド人問題ではコペンハーゲン基準に従う他はない。最後に、日本はNATO同盟諸国とともに、韓国の政策とも表裏一体とも言いうるトルコと中国のミサイル取引の中止に向けて行動すべきだと訴えたい。安倍政権は積極平和主義と地球儀を俯瞰する外交をすすめているので、日本は欧米とアジアの同盟諸国と共に行動し、中国がウィーケスト・リンクを狙いすますといった事態を許してはならない。(おわり)
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