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2013-08-28 00:00
失敗に終わった米国の中東大戦略
大井 幸子
SAIL代表
シリアの内戦が激しさを増し、多くの市民が化学兵器の犠牲になっています。『ウォールストリート・ジャーナル』紙のウィークエンド版にはビニール袋に包まれた多数の死体が床に並ぶ痛ましい写真が掲載されました。さらに衝撃的なのは「失敗に終わった大戦略」(Aug 24-25) というオバマ大統領の中東政策を批判する同紙の記事です。エジプトではムスリム同胞団のモルシ氏が拘束され、ムバラク元大統領が政権に返り咲く動きが出るなど、内戦直前の緊迫した情勢です。隣国トルコではエルドアン首相がジャーナリストへの思想弾圧を強めるなど、抑圧的な動きを加速させています。また、イスラエルは8月23日、レバノンのロケット弾攻撃の報復としてベイルート近郊を空爆しました。中東のメルトダウン・全面戦争がいつ起こるか、不穏な動きが重なっています。
そのような中で、Bard College のウォルター・ミード教授は、米国の中東政策を激しく批判し、「米国はムスリム穏健派を中心に中東地域で民主化を進めようとしたが、その見通しは甘かった。しかも、民主化推進に際して、サウジアラビアとイスラエルの関係を悪くしてしまった。サウジアラビアにとって、ムスリム同胞団の動向とオットーマン帝国の栄光を企むエルドアン政権の野心は、スンニ派の脅威と映る。また、民主化を煽動し、中東地域の指導権を狙うカタールとアルジェジーラがエジプトとトルコのデモ隊に資金を提供していることに、サウジは地域全体が不安定化に向かうと警戒している。シリア内戦に米国が早めに介入できなかったことは、失策に尽きる。ロシアとイランがアサド政権を支え、シリア情勢は悪化の一途をたどる。そうした混乱に乗じて、宗派抗争やエスニック・クレンジングが激しさを増し、シリアからレバノン、イラク、トルコへと混乱が拡大する可能性がある。混乱が深まるにつれ、急進派がテロリスト集団として再び力を盛り返す。じっさい、ビンラディン殺害から、アフガニスタンとパキスタンでテロの脅威は増している。中東でのイランの影響力が大きくなるにつれ、イスラエルとサウジは協力関係を深めるだろう。米国はそのイラン政策を根本的に見直す必要がある」と述べています。
チュニジアから始まった「中東の春」は、地域全体が戦火にまみれる状況にさしかかっています。そして、米国を始め、中国、ロシアもまた、この地域でどのような利権を獲得できるか、虎視眈々とその機会を狙っています。日本の中東外交もまた、複雑に絡み合った大国の虎の尾を踏まないよう細心の注意が必要です。
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