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2013-08-14 00:00
(連載)国際刑事裁判所について思う(2)
緒方 林太郎
前衆議院議員
国際刑事裁判所は、現在、アフガニスタン、グルジア、コロンビアといった国での事件について調査をしていますが、まだ具体的なところには至っておらず、現在、裁判が調査のフェーズから進んで、付託、起訴、予審、一審といった具体的なところまで来ているのはすべてアフリカ案件です。コンゴ民、中央アフリカ、スーダン、ウガンダといった国の個人ばかりですし、日本では「スケベニンゲン」として知られるオランダのスヘフェニンゲンにある拘置所にいるのもすべてアフリカ出身者です。さすがに「中東、南アジアや旧ソ連圏にもいるだろうよ、同じような事件を起こした人間が。なんで、アフリカだけが狙われるの?」という声が上がってもおかしくありません。
アフリカは植民地や奴隷の経験があるので、このあたりのことに対するセンシティビティーが非常に高いです。今はスーダンのエル・バシール大統領やケニアの新大統領たるウフル・ケニヤッタといった元首に対する逮捕状が出ています。彼らの行った事はたしかに何処かで裁かれるべきものだと思いますが、アフリカ政治的には「いけすかない」ということになるのではないでしょうか。
国際刑事裁判所が果たしてきた役割を否定するものではありません。国内裁判制度が不十分なところを補完する役割を果たしたことは数知れず、また、国際刑事裁判所の存在自体が権力による大規模犯罪行為への抑止力になったこともあります。上記でアフリカ側の感情を少し代弁しましたが、逆にアフリカ内部の論理だけに任せておくと(例えば、アフリカ連合の中に裁判所を置くとか)、元首級を訴追するような組織は絶対に出来ません。
私があまり好きでないと言ったのは、国際刑事裁判所そのものではありません。その運用です。簡単に言うと、「アフリカ以外で付託する案件を一つくらいやってみなさい。でないと、組織の中立性に疑問を持たれますよ」ということです。私はひねくれているせいか、どうも欧州的なヒューマニズムが自己中心的に見えてしまいます。「悪しき啓蒙主義」とでもいうのでしょうか。国際刑事裁判所における起訴案件の選択にその悪しき啓蒙主義は現れていないだろうか、そう思うわけです。(おわり)
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