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2006-10-11 00:00
安倍アジア外交の試練
村田 晃嗣
同志社大学法学部教授
9月末に安倍晋三氏が、予想どうり首相に就任した。これまで、安倍氏は保守的なイデオロギー色の強い政治家と目されてきた。だが、首相就任後の安倍氏は、すこぶる慎重かつ現実的である。歴史認識については村山談話のみならず河野談話も踏襲して、集団的自衛権の行使に関する解釈の見直しにも慎重な態度をとり、靖国神社参拝については、参拝を公約した前任者とは大きく異なり、行く行かないを明言しない態度をとっている。中国も韓国も安倍氏の訪問を受け入れた。しかも、北朝鮮が核実験に踏み切ったことから、両国訪問に際しても靖国問題が突出することはなかった。
首相になれば慎重になるのは当然である。あるいは、安倍氏はそのイメージほどイデオロギー的な政治家でなかったのかもしれない。
しかし、安倍氏のアジア外交にとっての試練は、これからである。
まず、北朝鮮の核開発の動きに、実効性のある対処を、国際的に構築しなければならない。また、安倍氏の慎重で現実的な路線転換は、外交のプロを安心させるが、安倍氏のイデオロギーに共鳴していた人々や安倍氏の「毅然たる」態度に期待していた人々の間で、今後失望感が広がるかもしれない。さらに、靖国問題は当面先送りできても、抜本的な解決は見ていない。強烈な個性を持った前任者の影と、首相候補になる前の自らの言動から、安倍氏がどのような距離感をとって世論を納得させるのかが、今後の大きな鍵であろう。
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