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2013-07-24 00:00
民主党を食いちぎるピラニアの群れ
杉浦 正章
政治評論家
魚が煮られるのも知らずに鍋の中で泳いでいることを「魚の釜中(ふちゅう)に遊ぶ如し」というが、今の民主党代表・海江田万里の姿がまさにそのままだ。代表職にしがみついているが、早晩煮上がって食われるのだ。誰が食うかと言えば、民主党の労組・旧社会党系グループだ。日教組で参院議員会長・輿石東が食らい、その背後霊たる生活の党代表・小沢一郎も食うのだ。小沢の狙いは民主党分裂で自らの出番を作ることにあるが、逆に維新共同代表・橋下徹は民主党の非労組・松下政経塾系を食いちぎろうとしている。水に落ちた犬にピラニアが寄って来ているのだ。民主党内にはこれまでも陰に陽に繰り返されてきた労組系と松下・非労組系の最終決戦の萌芽がここにあり、党分裂すらも予感させる動きである。
7月23日の民主党役員会における最大の焦点を抽出すれば、辞任の意思が固い幹事長・細野豪志が公然と海江田の辞任を求めて代表選挙の実施を主張したことだ。これに対して輿石が猛反対したことが今後の党内対立の構図を物語る。細野は京大法学部の先輩である民主党代表・前原誠司の下で、民主党役員室長に就任して以来の前原のグループである。輿石は小沢の腹心である。その小沢は選挙後側近に「民主党は海江田でいかなければならない」と漏らしている。輿石には「海江田でいけ」と選挙前からけしかけている。なぜ小沢が海江田かと言えば、持論の「御輿は軽くてパーがいい」に尽きる。小沢は2011年の代表選でも海江田を推して、野田佳彦になだれ込んだ前原グループと対決、敗北している。参院選挙の惨敗は言うまでもなく代表たる海江田がその責任を一身に負わなければならない。その海江田が筆者がいち早く伝えたように、選挙前から辞任を回避し始めたのはなぜだろうか。背景には輿石ら労組グループが「辞任を一切口にしないように」とクギを刺して、支持を明確にしたからだ。それをよすがにごうごうたる批判にもかかわらず、代表職に必死ですがり付こうとしているのだ。
一方で細野の動きの背景には、言うまでもなく前原や前首相・野田佳彦の影が浮き出てくる。二人とも“戦犯”扱いを気にしていて今のところ前面に出られないが、ほとぼりが冷めれば必ず水面に浮上するだろう。「ポスト海江田」候補とされる野田、前副総理・岡田克也、前原、元財務相安住淳、元官房長官・枝野幸男、前外相・玄葉光一郎ら「6人組」が沈黙しているのは、野田を除きいずれも地元の選挙区で公認候補が落選しているからだ。自粛しているのだ。しかし一人落とした責任と、けた外れに落とした海江田の責任とは、自ずから異なるのであって、一定の猫かぶり期間が過ぎれば浮上する。こうした状況を狙って、いまや大阪限定の地域政党化が鮮明になった維新の橋下までが変化球を投げ始めた。この口から生まれたような市長は議員バッジもないのに政界再編なのだそうだ。さっそくみんなの代表・渡辺喜美が「国会議員として、責任ある立場から発言しないと再編話は進まない」とこき下ろした。めげずに橋下は「維新の会とみんなの党、それに民主党の一部が、話し合いをして、1つの勢力にまとまらないと国のためにならない。『維新』とか『みんな』とか『民主』という看板はなくさないとだめだ」と野党の糾合を訴えた。さらに、橋下は「今後、1年から2年かけて、1つのグループの形成に向けて水面下で動きがあると思う」と予言した。
橋下の狙いは民主、みんなの両党内の分断にある。民主党はもともと親しい関係にある前原を担いで新党を作るところに落ち着かせたいのだろう。みんなに対しては渡辺と幹事長・江田憲司の確執をてこにして、分裂を策しているのだろう。維新との連携を重視する江田は23日、「党内の不満が鬱積している」として、25日の両院議員総会で渡辺の党運営を議題にするよう要求した。渡辺と江田の対立が一挙に表面化した状態だ。こうして民主、みんな両党は内部要因と外部からの“干渉”で動揺をし始めたのが現状だ。これに憲法、集団的自衛権などをめぐる自民党からの働きかけが絡んで、当面混迷度を深めて行くものとみられる。そもそも民主党は求心力の失せた海江田を労組グループや小沢の思惑で無理矢理続投させようとすることに無理があるのであり、海江田が私心を捨て去り、辞任することが、党再生の道であることを肝に銘じなければならない。冒頭で指摘した「魚の釜中に遊ぶ如し」が「釜の中に友を追う魚」となっては、全滅必至と心得るべきだ。
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