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2006-10-09 00:00
中国の環境問題解決に期待される日本の役割
坂本 千尋子
家電メーカー勤務
中国温家宝首相が日本経団連御手洗富士夫会長のとの会談(2006年9月5日北京)で省エネ・環境保護分野における技術協力への期待を表明しましたが、日本が経済界あげて中国の環境問題解決に支援を強化することが出来れば、冷え込んだ政府間関修復にも大きな役割をはたすものと思われます。
中国は高度経済成長時代にはいって環境破壊の勢いはとどまるところを知りません。大気汚染が深刻で、日本の酸性雨の原因とも言われています。健康への被害を食い止めようと交通規制が行われると騒がれましたが物資の輸送が停滞すれば経済成長に打撃となります。一方では黄河や揚子江といった大河の汚染も進んで水道水の汚染も急速に進んでいるそうです。手に負えないレベルの公害問題を指摘することは政府批判にもなることから中国のメディアも汚染の実態については大きくは扱っていませんが、経済発展が続く限り環境汚染はさらに悪化することは必至で、報道機関も黙過できなくなるでしょう。
この状態が続くかぎり日本の政財界も中国の実態を把握できず、環境問題を静観するだけで打つ手はなかったのでありますが、中国側にもこのところ変化が見られます。例えば、中国国家環境保護総局と国家統計局がこの9月7日に、「中国国民経済概算研究報告2004」を発表し、従来の国内総生産(GDP)から社会全体が資源の消耗や環境汚染などへ与えた悪影響を金額に換算して差し引いたグリーンGDPを算出した数値を初めて発表しました。これは大きな変化で、情報公開を求める世論に中国政府が配慮したものと言えます。
日本での報道によれば、研究報告書では2004年において環境汚染による経済損失は5118億元に達し、その内訳は水質汚染による損失2862.8億元で全体の55.9%、大気汚染による損失が2198.8億元で42.9%、固体廃棄物と汚染事故による損失57.4億元、1.2%と紹介しています。また、統計局は「評価方法は科学的に妥当」としながらも「技術的な制限もあり算出された損失額は一部で完璧なグリーンGDPを作り出すには困難な仕事が残っている」と説明したとされます。データ不足と未熟な処理技術によって正しい数値がはじき出されるのは不可能に近いと中国当局も頭を抱えているようです。
中国では、2004年現在での汚染物質をすべて除去するためにはGDPの約6.8%に相当する1兆800億元の費用が必要だといいますが、第10次五カ年計画(2001-2005年)に投じられた環境汚染対策費はGDPの1.18%にすぎなかったと報告書は指摘しており、経済大国の歪(いびつ)解消には焼け石に水といった状態です。中国はエネルギーを大量に使う企業に省エネ推進を義務づけるなどの政策転換で、2006年度GNP当たりエネルギー消費量の目標を前年比4%減と設定しましたが1-6月は逆に0.8%増になったといいます。中国では、世界に強まる環境規制で輸出自粛に追い込まれる企業が続出するなど経済成長の足カセになりかねない事態も表面化しています。
日本は世界に誇れる省エネ技術国です。そして、何よりも日本は高度経済成長時代に深刻な環境問題を数多く実体験し克服してきた環境克服国でもあります。日本は地球環境保護の重要性を論じながらも「汚染大国中国」を叱れる世界唯一の国家であることを忘れてはなりません。温首相の申し出にどう応える考えか、日本の政財界の動きに期待したいと思います。
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