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2013-07-05 00:00
(連載)省庁の設置法と行政改革(2)
緒方 林太郎
前衆議院議員
中川秀直前議員がこの設置法廃止を訴えたのは、おそらく官房長官としての経験があるのだろうと思います。官邸主導で何かモノを進めようとしても、結局タコツボに籠った各省庁の縦割りの壁を超えられなかったといった経験があるのではないかなと推察しています。官房長官は正に全省庁を統括する司令塔ですから、その辺りの宜しくないところがよく見えたのでしょう。ただ、そこで「問題の根源は設置法だ」と思えるところは慧眼です。
この設置法という考え方ですが、例えばフランスでは組閣毎に省庁再編的なことがあります。内閣毎に大臣の数が異なりますし、各大臣に割り振られる権限も変わっていきます。重鎮系が入閣する際には権限を非常に集中させて「スーパー省庁」になることも珍しくはありません。また、その内閣の懸案に応じて、ある事務を担当するのは大臣(ministre)なのか、特任大臣(ministre delegue)なのか、閣外大臣(secretaire d’etat)なのかも異なります。いずれにせよ行政のトップである大統領が自由に組み合わせを作ることが出来るようになっています。自由に大臣ポストを作ることができるので、時々「大臣間に権限の重複があるのではないか」、「この大臣はやることがなくてヒマなんじゃないか」と思うこともあります。これで行政機構の縦割り、権限争いが即座に解消できるわけではないのですが、組織文化は変化を迫られるでしょう。そして、少なくとも政治主導を実施していくための体制作りはやれるでしょう。恐らく、フランスにおいては臨機応変に組閣時の政令で対応しているはずです。
このフランスのモデルがすぐに日本に適用できるとは全然思いません。ただ、今の組閣を見ていると、既に出来上がった設置法の枠組みに政治の側が身の丈を合わせているようなところがあります。もっと官邸主導、政治主導を貫いていこうとすれば、この「設置法」という役所側からすると当然視されている枠組みそのものを見直す必要が必ず出ます。これを実現するための法律改正は大変でしょうが、組閣毎に総理大臣が自由にチームを編成できるようにすることが可能になりましょう。具体的には、組閣毎に権限全般、特に重要案件の担当を配分するための政令を作るというイメージになります。ただ、霞が関の全権限を割り振る政令となるととてつもないものになりますから、ある程度の緩さ、重複みたいなものを許容する大らかさも必要だと思います。
実は内閣府特命担当大臣の所掌事項の割り振りというのは、既に上記のような感じでなされています。ただ、これまでの政権は戦略的にその事務を特命担当大臣間で割り振れていたとは到底思えません。その辺りの問題点は、民主党政権で消費者担当、拉致担当といった大臣が何度交替したかを見ていると分かります。政権が安定しなかったり、政治の側に明確な戦略性がなかったりすると、頻繁に担当国務大臣が替わって、単に行政事務が混乱するだけになります。政治の不安定がそのまま行政の不安定に繋がりかねないという問題点になるわけです。この点はもう少し考えてみたいと思います。この設置法という考え方自体を見直そうという気概、中川秀直前議員が引退してからはとんと聞かなくなりました。ドカーンと打ち出し、霞が関のこれまでの硬直性に激震を走らせるにはこれ程通なネタはないと思われるのですが。(おわり)
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