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2013-07-05 00:00
反原発で「朝日・共産合作」の様相
杉浦 正章
政治評論家
7月4日公示された参院選挙は、2010年代前半の政治動向を決定づける“最終決戦”の意味合いを持つ。自公政権は過半数を確保出来れば、まず確定的に衆院選挙を15年以降に設定し、小泉純一郎時代以来の安定政権を継続させようとするだろう。選挙のもっとも先鋭的な対立点は、原発再稼働の是非となる。現状はまるで昨年末の総選挙を「原発冬の陣」とすれば、これに完敗した反対派の野党とマスコミが「夏の陣」で最後の巻き返しを図ろうとしているかのようである。しかし、野党は民主党など再稼働是認派と絶対反対派に割れ、浮動票も原発では動かないことが総選挙、都議選で証明されている。結果をあえて予想すれば、亡国の原発ゼロ路線が完膚なきまでに敗退するだろう。アベノミクスが象徴する経済問題は、もちろん最大の争点には違いないが、国論を2分するほどのものではない。というのもアベノミクスは、1~3月期の国内総生産(GDP)が、年率換算で3.5%増となったことが物語るように、実質経済へと反映され始めている。野党は突こうにも突けないのが実情だ。そうかといって、外交安保では尖閣問題、北朝鮮問題などに関する首相・安倍晋三の右寄り路線が国民的支持を得ており、付け入るすきがない。改憲も、加憲を唱える公明党を取り込めれば、3分の2に達する可能性もあり、安倍はトーンを「慎重」に転じている。したがって、一部マスコミや野党の狙いは、勢い国論を既に2分している原発再稼働反対に絞られるのだ。
事実、朝日新聞の反原発キャンペーンは日ごとに激しさを増し、いまや佳境の様相を呈している。昨年の総選挙でも、紙面は反原発一色であったが、結果は再稼働を総裁・安倍や幹事長・石破茂が堂々と前面に出した自民党の圧勝に終わった。ほとんどの原発立地選挙区で自民党が勝ったのだ。小沢一郎に乗せられて反原発政党「日本未来の党」を結成した滋賀県知事・嘉田由紀子は見るも無惨にたたきのめされた。このように既に総選挙で決着がついている問題を朝日が書き立てて、一部マスコミをリードし、共産党を初めとする野党が同調するというのが、今回の構図だ。朝日の論調は、社説も、記事も、反原発再稼働一色に塗り固められている。まず公示日4日の社説では「半年間の安倍政権で目につくのが、自民党の『先祖返り』ともいえる動きだ」と指摘して、「原発政策も同様だ。(安倍政権は)停止中の原発の再稼働や原発輸出への前のめりの姿勢ばかりが目立つ。こうした動きを後押しするのか、待ったをかけるのか。有権者の選択にかかっている」と露骨にも有権者に「反原発投票」をけしかけている。不偏不党の標榜などとっくに忘れた、まさにイデオロギー的かつ感情的な反対論だ。これに先立つ最近の一連の社説も「未来にツケを回すのか」「原発と政治、地元をとらえ直そう」「日仏共同声明、これは原発推進政権だ 」と執拗かつ“確信犯”的に再稼働反対を唱え続けている。
社説に共通しているのは「原発の負の部分のあげつらい」であり、家庭にとって切実なる電気料金の値上げ、中小企業の窮迫や電気料金倒産、4兆円に上る国富の流失など「実態経済への負の要素」は完全に無視している。まさに唯我独尊の再稼働反対論である。そもそも原発輸出への動きは、日本の原発の安全性を世界が賞賛している証左である。福島原発で米GE社製の1号機から4号機の原発だけが事故を引き起こし、日本製の5、6号機は事故を回避したことを、諸外国は高く評価しているのだ。米国のシェールガス輸入は、足元を見て高騰させている中東からの燃料費輸入に対して決め手となり、原発と共にエネルギーミックスの主役となり得るが、実現するのは2017年だ。ロシヤからの天然ガスも18年まで入ってこない。その間5年間もただでさえ電気料金の高騰で息も絶え絶えの中小企業や、実質増税を強いられている一般家庭の窮状は目をつむれというのか。企業の日本脱出が相次いではアベノミクスも空転して、再び不況へと拍車がかかるのは必定だ。朝日の主張は共産党の主張と酷似しており、まるで戦時の中国の「国共合作」ならぬ「朝共合作」の様相ですらある。
折しも原子力規制委員会は、8日に、新原発規制基準を施行、既存の原発が新基準に適合しているかどうかの審査が始まる。電力各社は当然相次いで再稼働の申請をして、選挙期間中の原発論議をいやが上にも盛り上げる。しかし、マスコミも政党も原発再稼働反対派の気勢は上がらないだろう。なぜなら総選挙の際は、朝日の扇動が奏功して再稼働の自民党と「原発ゼロ」の野党に対立軸がくっきり割れた。しかし今回は、肝心の民主党が再稼働容認に比重を移したのだ。政調会長・桜井充は「規制委が安全確認して、地元が納得すれば、再稼働に移すべきだ。ゼロは理想であり、つなぎの期間は現実的に対応せざるを得ない」と発言している。これは総選挙で「原発ゼロ」を前面に出した路線の明らかなる修正であり、基本的には自公と同じだ。これに対して共産党は「即時ゼロ」の暴論を展開、社民党とみどりの風とやらも類似の主張だ。そして参院選への影響は、総選挙と都知事選挙が立証したように、原発再稼働反対の主張は“機能”しないと言ってもよい。投票率が歴史的な低さを示す可能性が大きいからだ。これは、浮動票が動かず、第3極が伸びず、反原発票が情勢を左右できないことを意味する。読売の世論調査も参院選の比例区投票先は自民42%、民主9%、公明6%、日本維新の会5%、みんな5%、共産4%だ。公示直前の調査はまず狂うことなく投票での傾向を示す。こうして自公政権は、筆者が予想しているとおり過半数を上回り、安定多数をうかがう状況となる。従って原発再稼働にも「ゴー」の審判が下されることになる。「朝共合作」は失速する運命なのだ。朝日はこの対決に敗れたら、もう観念した方がよい。
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