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2013-06-29 00:00
日本国憲法と国連憲章について思う
池尾 愛子
早稲田大学教授
改憲の議論が進行しているため、日本国憲法への関心が高まっている。『日本国憲法』の書籍版が売れているというが、インターネット上の情報も充実しているので、併せて閲覧することを勧めたい。第1に、国立国会図書館のウェブサイトに、電子展示会「日本国憲法の誕生」が構築され、改訂も施されて充実してきている(http://www.ndl.go.jp/constitution/)。日本国憲法の制定過程に関する概説として、戦争の終結から、連合国最高司令官総司令部(SCAP/GHQ)の草案、帝国議会での審議、憲法の施行までがたどられている。そして、GHQ原案の一部、「カイロ宣言」(1943年)、吉田・マッカーサー書簡など、102点の資料が掲載されている。「国民主権と天皇制」、「戦争放棄」、「基本的人権」、「新しい二院制議会」、「違憲審査制」、「地方自治」という論点も過去と現在を結ぶ上で役に立つであろう。
第2に、日本語の国際連合広報センターのウェブサイトがある(http://www.unic.or.jp/)。「国連の活動」をクリックすれば、基礎知識・基礎資料にあたるものにアクセスすることができる。国連憲章の第6章「紛争の平和的解決」、第7章「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」をじっくり併せ読んでみてはいかがだろうか。第42条は、安全保障理事会が兵力の使用を伴わない措置では不十分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍または陸軍の行動をとることができると定めている。第8章「地域的取極」の第53条にいわゆる敵国条項が含まれている。
1990年代、日本がいわゆる「国連中心外交」をとれないことを日本語でわかりやすく解説した人に、イギリス人の日本研究家ロナルド・ドーア氏がいる。当時、『「ノー」と言える日本:新日米関係の方策』(盛田昭夫・石原慎太郎著、1898年)がブームを呼んでいたので、ドーア氏は「ノー」と言うだけでは不十分だとして、日本国憲法と国連憲章を対照させる議論を盛り込んだ本に、『「こうしよう」と言える日本』(朝日新聞社、1993年)という題をつけた。1997年には英語版『日本、国際主義、および国連』(Japan, Internationalism and the UN, Routledge)が出版され、ペーパーバック版も出ているので、こうした論点は海外の日本研究者にもよく知られているであろう。
最近は、留学や交換留学が以前にましてますます奨励されるようになってきている。欧州連合(EU)がエラスムス・ムンドゥスという制度を作り、EU加盟国の大学生・大学院生の域内での交換留学を奨学金によって推進していることが、EU域外の大学・大学院の動向にも相当の余波を与えているようだ。学生たちが「英語での授業」を行う大学に惹かれる傾向があるため、英語を母語としない国でも「英語での授業」を増やして学生を引き付けている。日本人学生が軍隊のある国、徴兵制度のある国に留学する一方で、そうした国から日本に留学してくる若者がいる。日本国憲法を議論する際、こうしたグローバル化の進行に無頓着であってはならないように思われる。
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