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2013-06-28 00:00
(連載)トルコ人はトルコをどう見ているのか(2)
河村 洋
外交評論家
第二に、現AKP(公正発展党)政権の外交を見ると、冷戦後の自肯定主義と2002年の選挙でのAKPの勝利によって、トルコはヨーロッパの一員という自国のアイデンティティを見直し、自らをアフロ・ユーラシア地域の要だと位置づけた。他方でAKPはEUとの共存のためにリベラルで市場志向の政党に変貌していった。キュシュッカン教授とキュシュッケレス助手は「ヨーロッパ人はAKPのイスラム主義的な側面に対して神経質になり過ぎている」と主張する。
アフロ・ユーラシア外交の概念は、アフメト・ダウトール外相がエルドアン首相の首席外交顧問であった時に作られた。この概念が典型的に表れているのは、トルコがNATOの加盟国にとどまりながら上海条約機構(SCO)のパートナーになるために署名したことである。中東工科大学で博士課程に在籍するガリプ・ダレイ氏は5月14日付けの寄稿でこの重要かつ無視できない問題を論じている。トルコがSCOに接近しているのは、EUが長年にわたるトルコの加盟申請に消極的なことに対する埋め合わせだと一般には信じられている。トルコのAKP政権は「SCOへの加盟はEU加盟国の人権と法の支配について定めたコペンハーゲン基準とは矛盾しない」と強調する。他方でダレイ氏はトルコがEUの準加盟国であることが民主化に一役かっているとも認めている。
注目すべき論点は、トルコの外交政策においてEU加盟が他の地域協力よりも魅力があるかどうかである。長年にわたってEU加盟申請が受け入れられないこともあり、トルコはそれに代わるべきシステムによって世界の中での自国の存在感を高めようとしている。しかしアメリカはトルコによるSCOへの接近はNATO加盟とは相容れないと見ている。ダレイ氏はこの件に関してトルコとイギリスを比較している。イギリスがEUを脱退したとしてもNATO加盟国の地位に異議を挟む者はいない。エルドアン氏によるSCO加盟申請によってトルコとEUの関係は悪化し、NATO加盟国としての地位も危うくなる。ダレイ氏はトルコが将来のEU正式加盟の可能性も排除せずに現実的な手順を踏むべきだと提言している。
このように外交面でアフロ・ユーラシア地域での存在感と多次元外交を強化しようとしているトルコでは、内政でのAKPによるイスラム主義的な内政政策も絡み、自国の主張を強める外交とイスタンブールへのオリンピック誘致にもつながっている。しかしエルドアン氏のAKP政権は現在、国内の混乱に直面している。何が騒乱を引き起こし、それが外交政策にどのような影響を与えるのだろうか?(つづく)
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