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2013-06-16 00:00
近隣諸国との研究交流を推進するために
池尾 愛子
早稲田大学教授
6月8-9日に静岡文化芸術大学で開催された日本経済思想史学会の全国大会において、国際シンポジウム「日本のエネルギー政策思想:内外の視点から」が組まれた。梅雨の合間の曇り空のもとではあるが、予定通り、韓国と中国の中堅研究者のパネル参加を得て、日本の中堅・若手研究者が討論をリードし、全体の議論もかみ合って実り多いシンポジウムになった。討論者以外の学会メンバーたちとの国際交流も大変うまくいったようだ。
韓国の方は「日本の石炭産業と輸送問題」を、中国の方は「中日原子力発展モデルとガバナンスの比較」をテーマにした発表を行った。もちろん、「日本のエネルギー政策思想」はこれだけでカバーしきれるものではないが、1年くらい前から、それぞれの専門的関心に基づくテーマを設定して準備をしていただいた。こちらも準備を進める過程で、2011年3月11日の東日本大震災に端を発して、海外の日本研究者やエネルギー問題研究者たちによって、日本のエネルギー政策、原子力発電の安全性やそれについての議論の仕方に大きな関心が寄せられ、いくらか歴史的な視野からの研究が精力的に行われていることが分かってきた。日本の研究者もこの動向に無関心ではいられないはずである。
シンポジウム・プロジェクトとして、日中韓の3カ国を軸にしたものの、3カ国だけの交流を企図したわけではない。昨年秋から今年初めにかけて、ヨーロッパや北米からのパネル参加者を模索してみたが、こちらはうまく調整がつかなかった。日本研究者に標的を絞っていたものの、ヨーロッパや北米にいる研究者を会議の期間だけ招聘することは容易ではないので、彼ら自身の計画する訪日スケジュールに乗せてセミナーを企画することにした。エネルギー問題についてなら、中国の研究者もかなり自由な発言ができるようであり、韓国の研究者にとっても、専門の近い中国人とは研究交流できることが実感されたようだ。近隣諸国での研究交流は可能な分野から推進されるべきであろう。
研究交流とはいえ、査証の問題がある。2011年7月の国際経済学協会の世界大会(北京・清華大学)への参加者は、査証の取得を要請された。私の場合、21世紀以降は、これ以外の中国での会議への参加について査証を要請されていない。それに対して、中国からの訪日の場合、研究会議への参加を目的としても、「短期商用等査証(ビザ)」の取得が必要である。今回は、私の組織する研究プロジェクトの一環で、私の組織するシンポジウムへの参加であったためか、こちらからは、私の作成した招聘理由書と滞在予定表、日本経済思想史学会の大会プログラムをまず送り、追加で私の在職証明書を送って、必要な査証が取得された。「訪日の2ヶ月前から準備を始めれば大丈夫」との助言があったので、4月上旬に最初の書類を郵送するなど手続きを開始したところ、はたして6月初旬に査証が確保されたようだ。中国旅券の保有者に対して短期訪問時の査証取得を義務付けている国は多いようで、査証取得が間に合わず、訪問予定が取り消されることがあると聞く。2年後あたりに大きな国際会議の日本開催が計画され、中国からの参加も期待されているようなので、注意を喚起しておきたい。
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