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2006-10-02 00:00
国際社会にアピールできる開発援助政策を
村上正泰
日本国際フォーラム主任研究員
近年のG8/G7会合においては、開発援助に関する議論の比重が高まっている。貧困撲滅、教育の普及、HIV/AIDSなどの疾病防止といったミレニアム開発目標(MDGs)の実現に向けて、先進諸国はイニシアティブを発揮しようと競い合っている。その中で、ODAについては、対GNI比で0.7%に引き上げるという目標の下、各国は積極的な増額姿勢を打ち出している。
こうした状況に対応して、現状では対GNI比が0.2%にとどまっている我が国も、昨年のアジア・アフリカ首脳会議などの場において、将来的な目標達成に向けて、十分な水準のODAを確保していくことを公約している。しかしながら、今年7月に閣議決定された「骨太の方針2006」においては、今後5年間の歳出改革の目標として、ODAは▲4%~▲2%とされている。不思議なことに、この数字は各分野における歳出改革の具体的内容を説明した箇所には出てこないで、そこでは「政府の対外公約は、確実にこれを達成する」とされており、別表において突然現れるのであるが、削減するという方向性に変わりはないであろう。
もちろん、少子高齢化が急速に進展する中、累積する巨額の財政赤字は深刻な問題であり、財政再建にしっかりと取り組む必要があることは言うまでもない。しかしながら、「骨太の方針2006」と国際公約との間に、いかなる関係があるのか明確ではない。与党における議論の過程では「ODAも聖域ではない」という説明はなされていたが、それだけでは国際社会を説得できない。
確かに、効果的な援助を如何に効率的に行うかということが重要であり、単にODAの金額を増せばいいというものではない。しかし、そうであればこそ、量的削減を補って余りあるだけの実質的効果をもたらすことができる開発援助のビジョンを示す必要がある。それなくしてODA削減ありきという姿勢でいると、それは単なる財政再建原理主義でしかなく、他の先進諸国から遅れをとるばかりではなく、舌の根も乾かぬうちに公約を反故にする国だとして国際的信用も失うであろう。
政策は全体としてひとつの体系でなければならないが、我が国においては、個別のテーマごとに場当たり的な局所解を追い求めるきらいがあり、その結果、整合性のない方針の継ぎ接ぎとなり、全体的な最適解が見失われてしまう。上述のODAはまさにその典型例である。官邸主導ということが言われるが、プレーヤーを増やすだけでは意味がない。政策の全体を見渡し、縦割りになりがちな政策を明確な理念の下にまとめ上げることこそ、必要なのである。開発援助が国際的な盛り上がりを見せる中で、国際社会にアピールできるような開発援助政策を示していかなければならない。
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