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2013-06-02 00:00
(連載)日露首脳会議をめぐる3つの問題点(2)
袴田 茂樹
日本国際フォーラム「対露政策を考える会」座長
北方領土問題解決に向けての対露交渉の日本の基本方針は「4島の帰属問題を解決して平和条約を締結する」というものであり、安倍首相や歴代の首相、外相はこの表現を正確に守ってきた。しかし、ロシアの首脳や専門家の間では、つぎのような対日批判が一般化している。「4島の主権が日本にあることをロシアがまず認めろ、そのあとに交渉だというのが日本の立場だ。これは到底、ロシアには受け入れられない。」パノフ元駐日ロシア大使も、「日本の立場は最大限主義で、最後通牒を突きつけるに等しい」と述べた。
ロシア側には重大な誤解がある。日本の領土交渉の基本方針は、交渉前から4島の日本への帰属確認を条件とはしていない。ニュートラルな表現をとっており、ロシア側はこの重要なポイントを理解していないのだ。「帰属」は「返還」ではなく所属という中立的な意味である。交渉の基本方針では、4島の主権の帰趨については、まだ何も語っていない。日本人も、このことを理解していない者が多く、混乱が生じている。もちろん、北方4島が日本領だというのは、日本国の基本的な原理・原則であり、国民による北方領土返還運動も、当然ながらこの立場から行われる。しかし、領土交渉に臨む日本政府の基本方針は、一見ニュートラルだ。さもなくば、そもそも両者は交渉の土俵に上がれない。土俵に上がった後、どのような立場で交渉するかは、別問題である。
懸念されるのは、日本の政府要人もこの「原理・原則」と「交渉の基本方針」の区別を明確にしていないことだ。日露首脳会談直後の4月30日午後、ある政府要人は記者会見で、「基本的には4島の帰属は日本にあるということを確認した上で、そこから返還交渉をスタートしていくのが基本であります」と述べている。
この要人の気持ちは日本人ならよく理解できる。歴史的にも法的にも日本領土であり、不法に占領されている北方領土に関して、まずロシアがその事実を認めよと述べているわけだからだ。これは、北方領土問題に関するわが国の原則的立場でもある。しかし、領土交渉を始める前に、4島の「日本への」帰属の確認をロシア側に求めるとしたら、交渉そのものが不要となる。ロシア側に最後通牒といった交渉否の口実を与えないためにも、政府要人や政治家は、この「原則」と「基本方針を」明確に区別する必要がある。(おわり)
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