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2013-05-25 00:00
(連載)世界中で消されていくチェチェン人たち(2)
大富 亮
チェチェン・ニュース発行人
悪夢。そのオーストリアで、新たにチェチェン難民の母子が強制送還の危機にある。夫と兄弟はロシア軍に誘拐され、行方不明。現地の支援者は「このままでは母子はチェチェンに送還され、弾圧されてしまう。最後の望みは人道的滞在許可で、現在署名を集めている」という。日本人にとっても、これはとても人ごととは思えない。日本でも大勢のチェチェン難民が、難民認定を受けられず、強制送還されているからだ。ところで、「プーチンさんはすばらしい」と言ってロシア市民になったフランス人俳優のジェラール・ドパルデューが、カディロフからグローズヌイに家を与えられ、そのうえ、息子を失ったチェチェン人に扮して映画出演の予定だ。どう見てもチェチェン人には見えないが。
さて、ここで俳優エリザベス・ハーレーとそのドパルデューが、ラムザン・カディロフと仲良くしている写真と記事が、デイリーメールから配信された。記事のタイトルは「チェチェンから愛を込めて」だから、いい気なものだ。カディロフが人権活動家ナターリア・エステミーロワを惨殺したことはほぼ確実だが、まるでそんな事はなかったみたいな記事だ。今までわれわれが見てきたものは何だったのだろうかと思う。世界中のさまざまな土地で、追い立てられ、嘲笑われ、何か大きな力にひきちぎられるようにして死んでいくチェチェンの人たちの姿ではなかっただろうか。
日本の人権派の政治家の間でも「ボストンみたいな事件があるから、チェチェン人難民の受け入れには二の足を踏まざるをえない」というような話が出回っているのだという。私はそういう話を聞くたびに、いきどおっている。そんな言葉では足りない。難民をめぐって、こんなにもひどいことが起こっているのに、根本的な原因に目を向けないばかりか、その末端にいる難民にさえも、見てみぬふりをしようとしているのか・・・。
日本にも、チェチェンを含め、さまざまな国から難民がやってきている。その人々を受け入れるのは国際社会の一員としての日本の義務だし、それを平和にやりとげるために必要なのは、かれらを包摂する受入れ社会の暖かさだ。収容所に閉じ込めるのではなく。迷惑者や余計者扱いをするのではなく。たぶんこれは、ボストン爆破事件の背景にもどこかでつながっている問題なのかもしれない。難民たちを受け入れることで、私たちはようやく、世界で起こっている苦しみに気がつくだろう。チェチェンを例に取るなら、そもそもは、プーチン・ロシアによる対チェチェン軍事侵攻がなければ、こんなことは起こっていない。根本的に事態を変えるためのキーポイントはそこに着眼することにある。難民条約の真の目的というのは、私たちに、世界に対する公正なものの見方をすること、そして、そのために行動することにあるのではないだろうか。(おわり)
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