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2013-05-24 00:00
日韓ともにヘイトスピーチは止めよ
杉浦 正章
政治評論家
「憎悪発言」や「憎悪表現」をヘイトスピーチ(hate speech)という。最近日本でも東京、大阪のコリアンタウンで「朝鮮人を殺せ」「朝鮮は出て行け」などと連呼する右翼などの動きが顕著だ。やはりそのヘイトスピーチに満ち満ちているのが、韓国3大紙の一つ中央日報の論説コラム「原爆投下は神の懲罰」だ。日本人がもっとも痛がる急所にこれでもかと塩を塗り込んでいる。まさに両国間で「売り言葉に、買い言葉」の状況が生じている。放置しておけば関東大震災の朝鮮人虐殺の悪夢に発展しかねない危険をも内包する。どの国にも跳ね上がりは存在するからだ。政治家はコラム批判を展開して溜飲を下げているときではあるまい。5月17日の記事で筆者が「諸悪の元凶が韓国のマスコミにある」と指摘した通り、韓国のメディアの扇動的かつ感情的な報道が止まらない。中央日報は20日、論説委員の署名入りで「安倍、丸太の復讐を忘れたか」とセンセーショナルな見出しの論説コラムを掲載した。その中で「原爆は神の懲罰であり、人間の復讐だった。ドレスデンはナチに虐殺されたユダヤ人の復讐だった。広島と長崎は日本の軍国主義の犠牲になったアジア人の復讐だった。特に731部隊の生体実験に動員された丸太の復讐であった。丸太の悲鳴が天に届いたのか。1945年8月に原子爆弾の爆風が広島と長崎を襲った」と言い募っている。
今月12日に首相・安倍晋三が航空自衛隊松島基地を訪れた際、試乗した航空機の番号が731部隊と同じ「731」だったことにこじつけた難癖だ。さらに「安倍はいま幻覚に陥ったようだ。円安による好況と一部極右の熱気に目をふさがれ、自身と日本が進むべき道を見られずにいる。自身の短い知識で人類の長く深い知性に挑戦することができると勘違いしている」と、アベノミクスを展開する安倍を批判している。最後に「日本に対する懲罰が足りないと判断するのも、神の自由だろう」と締めくくった。再度原爆を日本に落としたいと言わんばかりの“ヘイト”に満ちた表現である。中央日報は「記事は論説委員個人の見解だ」と逃げを打っているが、やくざでもあるまいし、「子分がやった」はない。論説委員の記事は社を代表する記事そのものであるはずだ。
こうした韓国の新聞の過激かつ感情的な論調は何に由来しているのだろうか。もちろん安倍が就任してからの一連の歴史発言が直接的に刺激しており、これを維新共同代表・橋下徹の慰安婦是認発言が増幅させていることは確かだ。しかし根底には恨みつくす「恨(はん)の精神」が民族に横溢していることがある。「恨の精神」は韓国民族の一大欠陥なのである。さらに現実に目を移すと、韓国の三大紙朝鮮日報、中央日報、東亜日報は、進む情報革命で発行部数が激減し、経営難に直面しているのだ。3紙のうち1紙が近い将来つぶれてもおかしくない状況にあると言われる。これが発行部数獲得の激烈な競争となり、部数を維持するためには「反日報道」がもっとも手っ取り早いのだ。受け入れる読者の方も、韓国経済が「アベノミクスの爆撃」で崩壊現象を見せ始めたことへの“逆恨み”が骨髄に達している。現代自動車ですら2ケタの減益だ。運輸、造船、建設、不動産などが軒並み業績不安に陥っている。20を上回る銀行が倒産し、失業者の増大で社会不安も生じている。
大統領・朴槿恵は訪米の際の報道官によるセクハラ事件で痛撃を食らった上に、「円安空襲」で就任早々から“内憂外患”に目を奪われた。能力にも欠けるのか、ろくな経済対策も打ち出せないままだ。しかし、国民の不満をそらすには当面「反日」でいくしかないと、安易な判断に陥りがちの毎日である。 反日報道にはまず政治家がこびを売り、その政治家に官僚がこびを売り、そして朴槿恵が反日へと傾斜する、という悪循環の構図が出来上がってしまっているのだ。これにどうくさびを打ち込んで行くかだが、日本の政治家の対応もなっていない。官房長官・菅義偉が「誠に不見識」、公明党代表・山口那津男が「非常に許し難い」、維新共同代表・石原慎太郎が「許し難い。腹立たしく思う」と批判しているが、それだけに終わっている。これでは石を見て「石である」と言っているのと変わりない。国民の溜飲を下げる事だけに配慮している。有能な政治家なら発言はこのヘイトスピーチ合戦をどう解決すべきかを視野に入れなければならない。そろそろ両国とも燃え上がる反感の焰(ほむら)に、水を差すべき時に来ているのだ。安倍が23日に自民党副総裁・高村正彦に「近隣諸国との関係を考えると、このままにしておいていいというわけでもない」と漏らしているが、本格的に“和解”への道筋を模索しなければならない。
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