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2006-09-29 00:00
文体に難!『平成18年度日本の防衛―防衛白書―』
佐島直子
専修大学経済学部助教授
毎夏、発刊される『防衛白書』は、安全保障研究者にとって貴重な一次資料であり、必携の参考文献である。筆者とて例外ではなく、大学の研究室には、1970年の第1回防衛白書(いわゆる中曽根白書)から1976年版防衛白書以降のバックナンバーを揃え、日常的に活用している。英語版白書も入手可能な範囲で集書している。とりわけ平成18年度版は、米軍再編に関する日米の合意直後ということもあり、内外の関心も高く、その刊行が仰望されていた。実際のところ8月に刊行された『平成18年度日本の防衛―防衛白書―』は、構成が精緻で行き届いており、期待に違わぬ内容である。掲載されている詳細な資料も大いに教育・研究に役立ちそうである。
しかし、しかしである。如何せん「本文がわかりにくい!」。防衛庁の広報誌『SECURITARIAN』9月号は、「読みやすく、理解しやすく、新しく」なったと胸を張るが、とてもじゃないが、本文部分はそのまま論文には「引用」しかねる、というのが同輩の首肯するところだ。「など」や「ほか」、「また」「も」「~ら」「~ともに」の多用。主語のない曖昧な「受身文」。数行に及ぶ一文。長い「節」の挿入。首を傾げたくなる「てにをは」の使い方・・・。いわゆる官僚言葉とも異なるなんとも奇怪な文体である。白書作成の複雑なプロセスや外交的配慮といった困難さを十分承知したうえで、よほどかつての「文きり調」が懐かしい。
偶々開いたページで、政治的にも当たり障りのなさそうなところを例にとれば、「自衛隊は、不測の事態に対応できる態勢を維持し、常時、極度の緊張を強いられる隊員が安心して職務に専念できる環境作りと士気の維持を図るため、(中略)また、メンタルヘルスケアの施策も行っており、隊員個人の精神衛生面でのケアを目的として、派遣前に指揮官などに対しメンタルヘルス教育を行うとともに、派遣中は艦内においてメンタルヘルスチェックを行い、事前にカウンセリング教育を受けた隊員が相談に応じる態勢をとっている」 (237~238ページ)。うーーむ。執筆者のメンタルヘルスが気になる文章ではないか。
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