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2013-05-20 00:00
(連載)米欧の狭間と日本(1)
緒方 林太郎
前衆議院議員
私はかねてから「米、欧、アジアと多面的に自由貿易網を広げていくべき」という意見を持っています。本当はWTOで多国間貿易交渉をやっていくのがいいのですけれども、残念ながら今WTOドーハラウンド交渉は動いていないので、次善の策として上記のような手法しかないのです。そういう中、我が盟友である、福島伸享前議員が私に語っていたのが「米欧のスタンダードの違いで、どちらを取るかを迫られることがある」ということでした。その時は食の安全や生物多様性の文脈でしたが、先日、日本農業新聞を読んでいたら「正にその通り」というテーマが出ていました。(なお、今、経済連携協定について一番詳しい新聞は日本農業新聞です。JAの新聞であるということから特定の方向性があることは否定できませんが、あれだけの情報量と調査をしている新聞はまずないでしょう。一般紙と比して、そのレベルの高さは称賛に値します)。
それは「地理的表示」です。このテーマはこれから必ず大きくなります。そして、日本は大きな決断を迫られます。実は欧州諸国は農産品の保護については、関税というツールよりも最近はこの「地理的表示」を重視しているように見えます。それは「地理的な名前そのものに価値があるものを保護していこう」ということです。例えば、ワインで「ボルドーワイン」と言えば、その「ボルドー」という名前そのもので「ああ、これは結構いいワインなんだな」ということを連想する方が多いでしょう。その地理的な表示そのものに価値があるものを保護していこうということです。日本から見ていると「そんなに重要な話なの?」と思うかもしれませんが、これに対する欧州の拘りたるや、それはそれは我々の想像を超えています。
今はWTOの場でこれが保護されているのはワインや蒸留酒です。日本も焼酎等を幾つかその枠組みで保護の対象にしています(例えば、球磨、薩摩等の名前)。欧州はそれを他の品目にもどんどん広げようとしていますが、WTOの場ではなかなか反対が強くて上手く行っていません。その代わり、欧州がやっているのが経済連携協定の中で「地理的表示をきちんと保護する」ということをどんどん個別に押し込むということです。
「反対が強い」と書きましたが、誰が反対しているかというと、いわゆる「新大陸」の勢力です。欧州から移民したりして、アメリカ大陸、オーストラリア等に行った方々が、出身地や先祖を思い、欧州の地名を使って商品を作ったりしているケースが結構あります。これが欧州側から見ると「うちが長年培ってきたネームヴァリューをタダ乗りしている」ということになるわけです。この旧大陸、新大陸の問題は中国と台湾にもあります。台湾産紹興酒の「紹興」というのも地理的表示です(醸造酒なので、まだWTOでは保護されていませんが)。(つづく)
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