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2013-05-17 00:00
分をわきまえない発言
尾形 宣夫
ジャーナリスト
物には言っていいことと、悪いことがあるのは当然である。それも時、場所をわきまえてのことだ。 ところが、である。日本維新の会共同代表でもある橋下徹大阪市長が、こともあろうに沖縄普天間基地を訪問した時に司令官に 「もっと風俗業を活用してほしい」と進言したというのだ。市長としては、米兵の性犯罪が多発している現状を何とかしようと「風俗の活用」を思い立ったのであろうが、あまりにも発想が短絡過ぎる。司令官は市長の進言に唖然として「禁止している。行くなという通達を出している。これ以上この話はもうやめよう」と言ったというから、市長の進言もそれ以上前には進まなかった。
当たり前のことである。そこら辺のおやじが冗談交じりに言うことを、あろうことか日本の新しい政治潮流をつくろうとする「維新」の若きリーダーが、在日米軍の首脳の1人に公然と言ったのだから聞き逃すわけにはいかない。かつて、沖縄米軍の最高幹部が米兵の強姦事件に絡んで「商売女を相手にすべきだ」といった趣旨の発言をして沖縄県民の猛反発に遭った。橋下市長の進言は、それとほとんど同じ趣旨である。政治改革の旗手を目指すのなら、発言は場所と時をわきまえなければならないのは当然だ。
もう1人は自民党政調会長の高市早苗氏だ。安倍政権の2人の党役員として注目されたのだが、どうも政策責任者としては脱線続きのようだ。賛否両論はあるが彼女は靖国神社の春の例大祭に堂々と赴いている。発言も誰はばかることなく言いたいことを言う度胸は大したものだ。だが、彼女は暴走してしまった。日本の「侵略の責任」を詫びた「村山談話」について「個人的には」と断りながらも「しっくりきていない」と明確に疑問を呈している。村山談話に対する安倍首相の見方を踏襲したのであろうが、米政府が旧日本軍の責任を否定するような首相の発言に疑問を呈したことで首相自身も軌道修正しつつある。 大体、こうした微妙な問題について、党幹部が不用意な発言をすることは許されない。石破幹事長も不快感を表している。
発言自体に政治家の資質の善し悪しが表れる。アベノミクスで独り勝ちの感もある安倍政権だが、一皮むくと出来損ないの政治家がいるようだ。安倍政権は東京都議選、その後の参院選に向けて失点は許されないはずなのだが…。憲法96条問題も、そう簡単には済みそうもない。政治家たる者、分をわきまえ、分を越えるような発言はすべきでない。ひとり橋下市長、高市自民政調会長にとどまらない。
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