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2013-04-25 00:00
安倍政権、専守防衛から能動戦略へ大転換
杉浦 正章
政治評論家
中国発と北朝鮮発の二正面の危機に直面して、安倍政権は戦後の安全保障を支配した専守防衛の思想から離脱して、先制攻撃による国の安全保障を可能にする機動的な能動戦略へと大きくかじを切ろうとしている。安倍政権が年内に策定する新防衛大綱への自民党提言案には、敵基地攻撃能力の保有、集団的自衛権の行使、海兵隊機能の整備などが盛り込まれた。首相・安倍晋三がこの提言を受け入れることは確実であり、日本は自縄自縛の専守防衛からようやく離脱、世界に普遍的な安全保障概念を導入することになる。民主党政権が打ち出した「動的防衛力」という考えを、さらに有事即応の機動的なものへとに発展させる。
もともと自民党内には専守防衛では安全保障は確保出来ないとする空気が濃厚であった。しかし、歴代政権が維持してきた政策の大転換となり、踏み切れない状態が続いた。こうした日本の足元を見るかのように、中国が尖閣へと触手を伸ばし、北朝鮮は日本の都市を名指しで核攻撃をすると威嚇するなど、日本を取り巻く環境は一変した。極東の新事態は、相手の攻撃を受けて初めて必要最小限の軍事力を行使していたのでは、とても生き延びられない情勢となった。安倍政権は今そこにある危機への対応を迫られた。安倍も幹事長・石破茂も早期対応が必要であるとの認識では完全に一致している。石破は「北朝鮮からミサイルを撃たれて、何万人が死んでからでは遅すぎる」として、国民の生命財産を守る手段としての敵基地攻撃能力確保を強調。第一撃甘受という受け身の姿勢を妥当としない方針を打ち出した。安倍も2月の段階では敵基地攻撃の必要を認めながらも、「現段階では考えていない」と述べるにとどまっていたが、4月22日の国会答弁では大きく踏み込んだ。具体的な手段を含めて敵基地攻撃能力確保を明言したのだ。安倍は「敵基地攻撃について言えば、Fー35Aにその能力がある。検討しなければならない」と、次期主力戦闘機として逐次42機の導入が決まっているFー35Aを使う可能性に言及した。
専門家によると、同機をプラットホームとして敵基地を攻撃することは十分可能である。Fー35Aはステルス機である。米国でやはりステルス機のFー22編隊と76年に運用開始されたFー15編隊とが模擬訓練の遭遇戦を展開したところ、Fー15はFー22が通り過ぎるまで分からなかったという。Fー35Aは同水準の性能を持ち、北は言うに及ばず、中国の戦闘機にも「圧倒的な優位性を保つ」(前防衛長官・森本敏)という。中国国営中央テレビによると、国家主席・習近平がロシア訪問を前に、ロシアから最新鋭戦闘機Su-35を24機購入する合意文書に署名したと伝えたが、専門家の間では「Su-35もFー35Aの敵ではない」とされる。敵基地攻撃は戦闘機だけでなく、巡航ミサイルや弾道ミサイルも使ったものとなる。もちろん当面は米軍との共同作戦となる。北も中国もミサイル防御能力に欠けており、併用すれば効果は絶大となる。敵基地攻撃に関する政府の見解は古く、56年の首相・鳩山一郎の国会答弁で「敵基地を叩くことは、法理的に自衛の範囲に含まれ、可能である」という方針が確立されている。
米国の艦船や米本土に対する北のミサイル攻撃などを、日本が防御する集団的自衛権については、国連も認める世界の常識であり、これまで自粛してきた方がおかしい。改憲が必要との見方があるが、時の政権の三百代言の内閣法制局の見解を、首相が変えれば済むことだ。敵基地攻撃も集団的自衛権も即時の対応には間に合わないが、戦時という緊急事態が発生すれば、政府は国内世論からも米国からも“超法規”の対応を迫られよう。自衛隊に海兵隊機能を持たせることは石破のかねてからの持論である。現状では占領された孤島を奪還する能力は自衛隊には乏しく、敵前上陸を可能とするにはどうしても海兵隊機能が必要だ。こうして「安倍・石破安保路線」の上に防衛政策は大転換する流れとなった。かつて「秋葉原の暴漢のような国が別々に二つも存在するのだから、近ごろ幼稚園でも備えている刺股(さすまた)ぐらいは供えるべきだ」と書いたが、核攻撃まで明言されては、刺股ではおさまらない。暴漢がピストルを撃って暴れ出す前に、少なくとも電流が流れると、全身の筋肉が硬直したようになって身動きが取れなくなるテーザー銃くらいの備えは必要だ。国民の生命財産を守るためには、おさおさ準備を怠るべきではあるまい。半狂乱のような国々には、日本を攻撃すればこうなるという姿を見せておくことが、抑止力として機能するのだ。
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