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2013-04-21 00:00
原発廃止と戦争の危機
石崎 俊雄
龍谷大学教授
最近、原子力発電所を廃止もしくは順次稼動を減少させていくという主張が幅を利かせているが、果たして、そのような方向に向かった場合の影響が十分に考慮されているのであろうか。福島の原発事故の影響でほとんどの原子力発電所が稼動停止を余儀なくされ、その結果、日本のLNGの輸入量は日本の貿易収支を赤字に転落させるほどの影響が出ているのである。世界の経済大国である日本が、このように大量にLNGを輸入し始めたことによって、LNG価格が高騰している。これを苦々しく思っている国は世界に沢山ある。その筆頭が中国であろう。急速な経済成長に伴ってエネルギー需要が急増していることに加え、石炭利用に伴う大気汚染から脱却するためにも、LNGを喉から手が出るほど欲しがっているはずである。中国も継続的な経済発展のために原子力の利用を進めることを考えてはいるだろうが、現在の中国の技術レベルなどを考えると原子力エネルギーにシフトできるのはまだまだ先になりそうである。
これに対して、日本は順調に化石エネルギーから原子力エネルギーへのシフトを進めてきたのであるが、ご存知のように東北の大震災をきっかけに発生した福島原発事故により、停滞するどころかご破算にしようとしている。もちろん、原子力発電には放射能汚染などのリスクが常に付きまとうため安全性に対しては慎重な配慮が必要だ。しかし、これを廃止する場合には、ほかのリスクが発生しないかを同様に慎重に考える必要がある。
産業革命以降の近代・現代の主要な戦争は、資源とエネルギーの争奪戦という形で繰り広げられている例が多い。資源とエネルギーは自国民の生命を維持していく上での必要不可欠なものであり、各国とも容易に妥協・放棄はできない。もし、日本と中国がLNGの調達を巡って争奪戦を繰り広げたならば、戦争に発展する危険性はかなり高いと考えるべきである。その際、日本の平和憲法が戦争回避のために役立ってくれればいいのであるが、結局のところ、日本側の初期対応の遅れを生み出し、日本の敗北、すなわち多数の日本国民の生命の放棄にしかつながらない。すなわち、我々が信奉する平和憲法をもってしても戦争は回避できないと考えておくべきである。しかし、今、国家のエネルギー政策を賢明に考えて、化石エネルギーからの脱却を図っておけば、中国とのエネルギー争奪戦を繰り広げることもなく、戦争の危機も回避できる。
これは、中国にLNGの権利を譲れと言っているのではない。日本は自ら戦争を回避できる能力を有しているので、敢えてそのような危険を冒す必要はないということである。中国は、これからも成長を維持するために、戦争の危険をはらみながらも拡大政策を続けていくことであろう。中国とて、早急に化石エネルギーから原子力エネルギーへの転換を図らなければ、東南アジアの近隣諸国などとの戦争の危機を引きずっていくことになる。
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