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2013-04-08 00:00
反プーチン派弁護士、大統領選に出馬
飯島 一孝
ジャーナリスト
プーチン政権に反対する野党指導者で36歳のアレクセイ・ナバリヌイ弁護士は、4月4日夜のロシア民間テレビ「ドーシチ」に出演し、次期大統領選に立候補する意向を表明した。次期選挙は5年後だが、横領罪に問われて裁判中のため、早めに意向を示して世論の支持を得たい作戦とみられる。4月5日付『モスクワ・タイムズ』紙(電子版)によると、ナバリヌイ弁護士はテレビを通じて大統領選出馬の意思を示し、「もし当選したら、ロシアの天然資源を使って国民の生活レベルを飛躍的に改善したい」と抱負を語った。同氏が大統領選への出馬の意向を明らかにしたのは初めてとみられる。
ナバリヌイ弁護士は、当選後の大統領の使命として国民の生活レベルの向上を掲げ、「エネルギー資源の豊富な国の国民が、ヨーロッパ諸国の国民よりも貧しく、希望のない状態で生活しているのはおかしい」と強調した。ナバリヌイ弁護士は、2011年暮れに行われた下院選挙での不正に抗議する集会・デモで指導者のひとりとして活躍。その後も反プーチン運動を指導していたが、プーチン氏が大統領に復帰後、政権側から目の敵にされ、昨年、横領罪で起訴された。
起訴状によると、2009年、ロシア中部のキーロフ州の知事顧問をしていた際、公的企業からの木材の横流しに関与し、州政府に約3880万円の損害を与えたとされる。今月17日にキーロフ市で裁判が行われるが、有罪と判断されれば、最高10年間の禁錮形が言い渡される。そうなると、2018年の大統領選に立候補できなくなる。この起訴について同弁護士は「政権側は厄介な人物を収監しようとしている」と反発している。プーチン大統領の政敵とみなされ、収監されて政治活動の芽を潰された有力な人物に、かつて「石油王」と言われたホドルコフスキー元ユコス石油社長がいる。ナバリヌイ弁護士は、彼の二の舞を恐れているに違いない。このため早めに次期大統領選への出馬意思を明らかにし、メディアなどを通じて世論に訴え、有罪―収監の事態を回避する作戦とみられる。
一方、プーチン大統領は4月2日に行ったドイツ・メディアとのインタビューで、民主主義における強力な野党の存在を認め、「今日の世界では、経済でも政治でも、競争がなければ発展しない。だが、もちろん法律の範囲内でのことだ」と述べている。ナバリヌイ弁護士はリベラル派の政治家として知名度が高く、今後民主勢力をまとめればプーチン大統領の強力なライバルになりうる。大統領としても、同弁護士の去就に無関心ではいられないだろう。今回の作戦が吉と出るか、裏目になるか、じっくりと見守りたい。
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