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2013-04-05 00:00
日本のTPP参加の最重要の意味合い
石崎 俊雄
龍谷大学教授
日本のTPP参加について国内でいろいろな議論がされているが、私から見るとほとんど議論されていないように思えてならない。現在議論されているのは、国内の農業や医療・保険制度がどうなるかとか、貿易で有利かどうかという点であるが、これはTPP参加が持つ意味のうちのほんの一部に過ぎず、全体を見通した議論が全くされていないのが大変気になる。一体、政治家や多くの国民はTPPの意味をどのように考えているのであろうか?
TPPの持つ本質的な意味は極めて政治的である。ある面で、かつてのブロック経済に似たところがある。世界は、第2次世界大戦の反省からブロック経済の失敗を2度と繰り返すことはないであろうが、日本はどの陣営に参加するのかを慎重に見極めなければならない。勝ち組に参加すれば良いが、負け組に参加したりどこにも参加しなかった場合はかなり悲惨なことになると考えるべきである。参加する陣営を途中で変えたり、後から参加することは至難の業である。
TPPはアメリカなどを中心とする自由貿易圏であり、日本がこれに参加しなかった場合、残る選択肢はおそらく2つである。ひとつは、中国を中心とする自由貿易圏に参加すること。これは、まだ形が見えていないが、将来必ず発生してくるものと思われる。または、どこにも属さず、孤立すること。これらを比較すれば、日本がどれを選択すべきかは容易に判断が付く。昨今のTPP議論は、このようなことを真剣に考えているのか甚だ疑問だ。
TPP参加によって、輸出産業と農業などの間で不均衡が生じる可能性があるが、それは国内政治で修正できる性質のものである。しかしながら、世界の中でどの陣営に属すかは、国家の存亡に関わる一大事であり、それは国内政治だけでは如何ともしがたい非常に重い問題である。そのような考慮もなしに、TPP参加の是非を議論していること自体が全く奇妙である。
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