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2013-04-01 00:00
毎日新聞の世論調査は設問自体に問題あり
袴田 茂樹
日本国際フォーラム「対露政策を考える会」座長
3月18日に、毎日新聞は次のような世論調査をしている。
【設問】北方領土問題について質問します。ロシアのプーチン大統領は、日本とロシアが引き分ける決着を主張しています。北方領土交渉について、従来通り4島返還を目指すべきだと思いますか。4島にこだわらず柔軟に対応すべきだと思いますか。
【回答】4島返還を目指すべきだ=29%、柔軟に対応すべきだ=67%
私は、これを読んで、すぐ次のようなコメントを旧知の毎日記者に送った。
このアンケートは実質的には、プーチン大統領の「引き分け」(=柔軟な対応)と、日本の「来通りの4島返還」の選択を求める形になっている。しかし、プーチン大統領が「引き分け」と言う時の彼の真意が全く伝えられていない。このような背景説明を一切抜きにした世論調査は、世論をミスリードするものだ。「プーチン大統領は『引き分け』として、歯舞、色丹2島引き渡し論を主張していますが、賛成しますか」という設問なら、世論調査の結果は全く異なったものとなっただろう。日本政府は、原理・原則の問題として、当然のことながら「4島は日本領だ」と主張している。しかし、領土交渉の基本方針としては、「4島の帰属問題を解決して、平和条約を締結する」というニュートラルな表現に徹している。毎日新聞はこの点も説明していない。つまり、事実上、「ロシアの柔軟な態度」と「日本の硬直した態度」の選択を求める形になっている。
毎日の記者は、私が指摘したこの世論調査の問題点を率直に認めた。この世論調査は、設問自体に問題があり、それは単なる無知ゆえではなく、ここにはある意図を感じる。じつはこのような問題は、毎日新聞だけの問題ではなく、朝日、産経、NHKなどを含め、多かれ少なかれ他の日本のマスメディアにも総じて言えることである。結論として言えることは、パワーバランスや政治のパラダイムが大きく転換している現下の国際情勢において、日本とロシアが良好な関係を構築することはたいへん重要なことである。ロシアも対日関係の改善に意欲を示しており、日本も前向きの対応が必要だ。しかし、北方領土問題に関してロシアが容易に譲歩するとか、プーチン大統領が思い切った決断をすると考えるとすれば、それは幻想である。また、そのような幻想を抱いて、領土問題解決に向けてあれこれの譲歩案を日本側から提示すべきではない。
今日の時点において、平和条約問題で日本が守るべき最低限の立場は、ロシアに対して「国後、択捉も帰属交渉の対象だ」という両国の基本合意をきちんと守らせることである。将来、問題解決の客観的諸条件が生じたなら、思い切った創造的アプローチも必要かもしれない。しかし客観情勢から見て、今はその時機ではなく、まず基本合意の確認に徹するべきだ。
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