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2013-03-27 00:00
仲井間は普天間移設の原点に戻れ
杉浦 正章
政治評論家
もともと沖縄県知事・仲井間弘多は、焦点の普天間移転に賛成であった。それがなぜ豹変したかと言えば、一にかかって愚かなる鳩山由紀夫の「海外、最低でも県外」発言にある。これを活用する形で仲井間は10年に再選を果たしたのだ。しかし、極東情勢は尖閣問題と北の核実験で急変しつつある。日米安保体制に揺らぎが生ずることは、いまや危険極まりないものとなっており、一自治体の長であっても、大局を見逃してはならない。原点は普天間の危険から住民を守ることにあったはずだ。仲井間は要求を拡大せず、感情論でなく時代を見据えた対応を取るべきであり、すべてを「鳩山以前」に戻して、埋め立てに同意すべきだ。防衛省が3月22日、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う公有水面埋め立てを沖縄県に申請した。これを受けて仲井間は今後10か月前後で容認かどうかの結論を出す。仲井間は県外移転を主張しているものの、即座に反対の発言はせず、「内容をチェックして判断するには8カ月から10カ月かかる。それを経て承認するか、しないかということになる」と一応賛否には踏み込まない姿勢を示している。だが、現実には仲井間は身動き不能状態に置かれているのであり、いかに鳩山の“放火”が罪深いものであるかを物語るものとなっている。
しかし、仲井間は本当の政治家ならここは原点に立ち返る努力をすべき時である。原点とはまずそもそもの仲井間の立ち位置は普天間移転で当選してきているのだ。2006年の沖縄県知事選挙に、自民・公明の推薦で当選。2010年11月の知事選は、自民党、公明党・みんなの党の推薦を受け当選している。支持母体が長年普天間移転で沖縄に根回しを続け、民主党政権が打ち壊さなければ、知事も国も移設容認寸前までいっていたはずの話しなのである。2008年に米軍兵士が暴行・強姦容疑で逮捕された事件でも、仲井間は普天間移設計画には「全く影響しない」と語っていたのだ。仲井間の当初の判断の背景には、明らかに沖縄全体の負担減があった。なぜなら普天間移設構想は人口密集地から少ない地域への移設であり、沖縄の悲願でもある。移設と連動して海兵隊の一部のグアム移転が進められ、加えて嘉手納以南の米軍施設の統合整理が実現する。浦添市の牧港などの先行返還も期待される。紛れもない負担減が沖縄全体で実現するのであり、大きな利益となるものだ。繰り返すがそれをぶちこわしたのが無責任極まりない鳩山発言である。これが感情論を呼び起こし、マスコミに付け入る隙を作った。もともと現地の琉球新報と沖縄タイムズは、住民への“扇動競争”で生き延びてきている。
元防衛相・小池百合子が26日、「戦っている相手は沖縄のメディア。むしろ沖縄のメディアの言っていることが本当に県民をすべて代表しているとは、私ははっきり言って思いません」と述べているが、まさに勇気ある至言だ。これに朝日新聞が加わっている。その論調は感情論をかき立て、日本のよって立つ基盤である日米安保体制などは眼中にない。著しい例が23日付の朝日社説だ。これこそ感情論の権化のような稚拙な社説であった。さわりを紹介すれば「安倍政権は米国への配慮を重ねながら、沖縄の人々の心情を軽視しているとしか思えない」と感情論を臆面もなく打ち出した。加えて「政府の小手先の対応で県民が容認に転じるとは考えにくい。知事が『ノー』と言ったとき、その責任を、首相は自ら取る覚悟はあるのか」と開き直りの恫喝だ。怒りを臆面もなく前面に出しているが、そこには説得力がない。なぜないかと言えば、あえて触れない重要ポイントがあるからだ。尖閣や北の核実験をめぐる極東の危機、かつての仲井間の容認論、民主党政権の大失政、普天間自体の危機的状態の解決策、嘉手納以南の返還の利益、漁協など地元の賛成論など、都合が悪いものには一切触れていない。
失敗したときの首相に退陣を迫っているが、朝日は原発ゼロを煽ったものの、総選挙で有権者が逆の原発容認の選択をしたことをあいまいのまま放置している。その責任を取って社長が辞任したかと言いたい。要するに、沖縄は地政学上の軍事要衝なのであり、何をしでかすか分からない隣国が複数存在する限りにおいては、自治体の長も住民も甘受せざるをえない宿命を負っている。一朝有事の際に本土から出撃していては間に合わないのである。国家あっての自治体であり、いまこそこれを直視しなければならない時なのである。72歳の仲井間は軽い脳溢血を起こしたり、胆石の手術をしたり、その心身の疲労は耐えがたいものがあるのだろう。立場は同情してもあまりある。しかし、自ら選んで知事に再選された以上は、矮小(わいしょう)な感情論を排して、中央の政治家でも困難な大局的な判断をすべき時だ。まず最初に原点の「普天間移転ありき」の判断でことを一歩前進させ、歴史に名をとどめるべきである。国と自治体の将来に向けて私利私欲なしの“最後のご奉公”をするときだ。
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