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2013-03-22 00:00
(連載)北朝鮮への経済制裁は有効か(3)
六辻 彰二
横浜市立大学講師
中国との経済関係が、北朝鮮に対する制裁の効果を、無効化とは言わないまでも、著しく低減させてきたことは確かです。しかし逆に言えば、今回の経済制裁が奏功するか否かは、中国にかかってくることにもなります。今回の決議に中国は賛成し、「決議の完全実施を望む」とした一方、中断している六者協議の再開と「外交的解決」の重要性を強調しています。中国からみて、「核保有国」としての自らのステイタスが脅かされることは、それが例え友好国であっても、全く好ましくありません。また、度重なる静止にも関わらず、金正恩体制がミサイル実験を連続して強行したことが、中国政府を苛立たせているとしても、これまた不思議ではありません。
しかし、その一方で中国には、国連決議に対して北朝鮮が「攻撃を仕掛けてくる国に対して核の先制攻撃の権利を行使する」と表明するなど、緊張がこれ以上高まることを回避したいインセンティブがあります。万一軍事衝突が発生した場合、北朝鮮の現体制が崩壊し、難民が地域一帯に流出する状況は、中国にとって悪夢でしょう。また、軍事的緊張が高まる情勢は、否応なく中国を北朝鮮側に巻き込むことにもなっています。それは、望むと望まざるとに関わらず、中国が米国と正面衝突せざるを得ない状況に向かわせます。
これらに鑑みれば、中国が「外交的解決」で「穏便に」事を収めたいと考えるのは、ごく自然でしょう。ただし、「穏便に」ことを運ぶためには、日米韓に対してだけでなく、中国は北朝鮮に対しても相応の配慮をすることになると考えられます。六者協議に北朝鮮を出席させたいなら、なおさらです。その意味で、従来よりは多少規制を強化するとしても、「決議の完全実施」が行なわれるかは疑問です。その意味で、最初に述べたように、今回の制裁決議がすぐに期待される効果をあげるとは考えにくいのです。
ただし、今回の制裁決議は、より中長期的に北朝鮮の行く末を左右するターニングポイントになる可能性も孕んでいます。いかに苛立っていても、中国が北朝鮮を「切れない」ことは、北朝鮮側も理解していることでしょう。中国の面子を壊してでも、ミサイル実験と核実験を強行し続けることは、それを如実に物語ります。ただ、金正日が中国とつかず離れずの距離を保ち続けたことからみれば、金正恩体制になってからの北朝鮮は、特に中国に対して「関係を切れるものなら切ってみろ」といわんばかりの態度が鮮明です。つまり、北朝鮮の挑発は、日米韓にだけでなく、中国に対しても向けられるようになったとさえ言えるかもしれません。したがって、北朝鮮が核・ミサイルの開発を推し進めて暴走するスピードと、中国の忍耐力が切れるスピードのどちらが速いか、というレースになりつつあるとみれるでしょう。(おわり)
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