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2013-03-21 00:00
(連載)北朝鮮への経済制裁は有効か(2)
六辻 彰二
横浜市立大学講師
もちろん、これら全ての条件が整うことや、逆に一つも条件が揃わないことは、現実にはないでしょう。また、この7条件の他にも、制裁のダメージが自国政府への批判のエネルギーになりやすい民主的な社会か否かといったものも、経済制裁の効果を左右する条件といえるでしょう。ただ、これら7条件を検討することで、経済制裁の効果をある程度予測することができることは確かです。それでは、以上の7条件を現在の北朝鮮に当てはめてみるとどうでしょうか。北朝鮮が経済的に停滞していることは、ほぼ確かです。外務省のデータでは、2010年の北朝鮮のGNIは25億6000万ドル。これはタイの3,051億ドル、マレーシアの2,385億ドルと比較して10分の1程度に過ぎません。また、外貨準備高については詳細が不明ですが、少なくも潤沢とは考えにくいでしょう。そして、既に経済制裁が敷かれていたことから北朝鮮と貿易を行なう国はほとんどなく、電力や食糧の不足が伝えられているように、それらの自給もできていません。
こうして考えれば、経済制裁の効果が出やすい条件が多いようにみえます。しかし、その一方で、制裁の効果が生まれにくい条件も無視できません。外務省のデータでは、2010年の北朝鮮の輸出額が25億6000万ドル、輸入額が35億3000万ドル。一方で名目GNIは260億ドル。したがって、GNIに占める輸出の比率が約9.8パーセント、同じく輸入の比率が13.6パーセント。例えばタイの場合、76.9パーセント、72.4パーセント。先進国のなかで貿易依存度が低い日本の15.2パーセント、16.1パーセントと比較しても低い数値です(貿易依存度の低さ)。そして、朝鮮労働党の支配下で、経済活動のほとんどが国営企業によって担われている(民間企業中心の経済体制でない)。なにより、制裁の実施監視が困難であることが致命的です。
これまで北朝鮮には、国連決議に基づく制裁だけでなく、日本、米国などによる二国間の制裁が行なわれてきました。しかし、朝鮮戦争以来、「血の同盟」で結びついた中国は、現在でも北朝鮮の最大の貿易相手国です。IMFの統計によると、2010年の北朝鮮からの輸出の約46パーセント、北朝鮮の輸入の約59パーセントを中国が占めています。また、兵器やその開発に関連する物品の輸出を規制するワッセナー・アレンジメントに中国は加盟していません。中国との国境付近が、エネルギーや食糧を含めて、北朝鮮の生命線になっているといっても過言ではなく、これではいかに「貿易相手国の少なさ」「貿易代替の難しさ」という条件を満たしていても、経済制裁が効果をあげることは困難です。
中国という窓口が空いていることは、核・ミサイルの開発に必要な物資を、国際市場を通じて調達することが可能になります。かつてカダフィ体制のもとで、リビアではやはり核兵器の開発が進められていましたが、その際に必要になった物資や技術者のほとんどは、特定国からの援助ではなく、市場を通じて入手されていました(吉田文彦『核を追う:テロと闇市場に揺れる世界』朝日新聞社、2005年)。これまでに、日本で操業する企業でも、主に中国経由で北朝鮮に規制対象品を輸出し、検挙された事例は数多くあります(つづく)
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