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2013-03-20 00:00
(連載)北朝鮮への経済制裁は有効か(1)
六辻 彰二
横浜市立大学講師
3月8日、国連安全保障理事会は、3回目の核実験を行なった北朝鮮に対する追加制裁決議案を全会一致で採択しました。この決議案では、渡航禁止や資産凍結の対象となる個人や機関を増やしており、そのなかには朝鮮鉱業開発貿易会社(Korea Mining Development Trading Corporation)の最高幹部なども含まれます。また、禁輸品目についても宝飾品などの具体名が初めて明記されたほか、各国は北朝鮮外交官による「現金の大量輸送」に警戒すべきことが確認されています。
国連決議に反して核開発を行い、近隣諸国に脅威を与える行為は容認できないため、今回の決議は当然だと思います。また、全会一致で採択されたことも、評価できるでしょう。ただし、既に多くの識者が指摘しているように、これら一連の経済制裁が効果をあげることには、大きな期待をできません。少なくとも、この決議案によって北朝鮮が核・ミサイルの実験停止や放棄に向かうことは、ほとんどないといっていいでしょう。
1992年に発行された、宮川眞喜雄の『経済制裁』(中央公論社)は、日本語で書かれた経済制裁に関する書籍のなかで、コンパクトながら最も包括的なものだと思います。出版から既に20年以上経っていて、その間には制裁対象国の国民生活に甚大な影響を及ぼす食糧などの輸出規制による逆効果(制裁実施国への敵対心を高めるなど)から、特定個人を狙い撃ちにする渡航禁止や資産凍結といった「スマートな制裁」が主流になるなどの変化がありました。また、冷戦時代にソ連などへの兵器転用品の輸出を規制していた「対共産圏輸出統制委員会」が1994年に解散し、1996年に世界レベルで紛争地帯や大量破壊兵器の開発国や「懸念国」に対する輸出規制を行なう「ワッセナー・アレンジメント」が設立されるなど、多国間の輸出規制の仕組みも変化しています。しかし、そのような時代背景の変化を踏まえても、同書の内容は示唆に富んでいます。
経済制裁はいつでもどこでも効果をあげるものではありません。同書では、「経済制裁の効果を高める条件」として、主に次の7点が挙げられています。(1)貿易依存度の高さ。言うまでもなく、食糧・エネルギーの調達や産業構造で貿易への依存度が高いほど、それが遮断されることによるダメージは大きい。(2)経済規模の小ささ。経済規模が小さいほど、一国内部での経済活動に限界が生じやすく、これは高い貿易依存度に転化しやすい。(3)貿易相手国の少なさ。貿易相手国が少ないと、そのうち一つでも遮断された場合に、甚大な影響を受けやすい。(4)貿易代替の難しさ。輸入に頼る物品が、国内で調達しにくいものであるほど、制裁の効果はあがりやすい。典型的な例は原油。(5)外貨準備高の少なさ。外貨準備高の多寡は、非常事態への対応能力の高低に比例する。(6)実施監視の容易さ。制裁が取り決め通りに行なわれ、「制裁破り」が横行していないかをモニタリングしやすいほど、効果があがりやすい。(7)制裁対象国が民間企業中心の経済体制であること。経済制裁による業績悪化が、社員の待遇に直接的に影響する民間企業が多ければ、制裁対象とされる政策をとっている自国政府への批判が噴出しやすい。(つづく)
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