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2013-03-09 00:00
(連載)アルジェリア人質事件の首謀者殺害をめぐって(1)
六辻 彰二
横浜市立大学講師
チャド軍は3月2日、今年1月のアルジェリア人質事件を主導したイスラーム過激派「血盟団」のモフタール・ベルモフタール(Mokhtar Belmokhtar)司令官をマリ北部で殺害したと発表しました。しかし、フランス政府などから正式の発表はなく、さらに米国の監視団体SITEなどもベルモフタールが生存しているとの見解を示しており、現在のところ「死亡・生存」の真偽は定かでありません。
アルジェリア出身のベルモフタールは、1990年代の初頭にアフガニスタンでの戦闘に関わった後、「イスラーム・マグレブのアル・カイダ(AQIM)」の設立に従事しました。しかし、後に同組織から分離し、自らの組織「血盟団」を設立したといわれています。これらの武装組織は、主義・主張、活動内容、支援者をめぐって離合集散が激しく、必ずしも結束しているわけではありません。いずれにしても、サハラ一帯に進出したベルモフタールは武器や麻薬の密輸にも関与し、その神出鬼没ぶりからフランスや米国の治安当局にアンタッチャブルならぬアンキャッチャブル、つまり「拘束不可能な男(Uncatchable)」と呼ばれる存在になっていきました。ベルモフタールは生きているのか、死亡したのか。これまで、アル・カイダのビン・ラディンをはじめ、多くのイスラーム系テロ組織は、その指導的立場にある人間が死亡した際、それを隠すことはほとんどありませんでした。むしろ、比較的早い段階においてインターネット上などでそれを認め、その報復を宣言することが一般的でした。今回の場合も、近日中には血盟団やそれに近い組織から、何らかのメッセージが発せられると予想されます。
その一方で、ベルモフタールの生死に関わらず、これを発表したのがフランスでも米国でもなく、国連決議を受けてマリでの軍事作戦を主導するフランス軍と行動をともにしていたチャド軍であったことは、アフリカを舞台とする現在の対テロ戦争をみるうえで、意味深長と言わざるを得ません。マリを含む西アフリカ諸国は既にフランスの軍事介入を支持し、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の管理下で部隊を段階的に派遣しています。しかし、その多くは自国と近接するマリ南部にとどまり、イスラーム過激派の武装活動が活発な北部で軍事活動を主に展開しているのは、4,000名に登るフランス軍と、約2,400名のチャド軍です。チャドはECOWAS加盟国ではありません。にもかかわらず、むしろ近隣の西アフリカ諸国より積極的にフランス軍と行動を共にする姿勢が、今回はとりわけ顕著です。これはなぜなのでしょうか。
チャドは北をリビア、東をスーダン、南をカメルーン、西をニジェールに囲まれた内陸国で、1960年の独立以来、アラブ系とアフリカ系、親リビア派と親フランス派の抗争から内戦が日常的に続いてきました。1991年以来、22年に渡ってこの国を支配するイドリス・デビー大統領は、武装勢力を軍事力で鎮圧しつつ、もう一方で合法的野党も抑圧する「独裁者」としての顔ももちます。(つづく)
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