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2013-02-25 00:00
プーチン大統領、森元首相に領土と経済の”取引”示唆?
飯島 一孝
ジャーナリスト
プーチン大統領は2月21日、クレムリンで森喜朗元首相と会談し、北方領土問題の解決に意欲を示すとともに、日本側に農業などでさらなる経済協力を要請した。今春にも予定される安倍晋三首相の訪露の際、領土を交渉材料に経済協力を拡大させる戦略を改めて示したといえよう。森元首相の訪問は、安倍首相訪露の“地ならし”ということもあり、この会談を取り上げたロシアのメディアは少なかった。ロシア紙『ロシースカヤ・ガゼータ』(電子版)によると、会談では大統領が森氏を親密な関係を示す「トゥイ(君)」で呼び掛け、「我々は古くからの友人だ」と強調した。
さらに、大統領は森氏とのイルクーツク首脳会談(2001年)以来の日露関係について「この間、日露関係には重要な変化があった。もちろん、人生は常に複雑で多様なので、停滞がなかったわけではない」と山あり、谷ありの10年を振り返った。とくに、ロシアが生産するLNG(液化天然ガス)の10%を日本が受け取っていることを指摘しつつ、「農業での協力の発展も考えられる」と語った。
ここで大統領が、農業面での協力拡大に触れたことに注目したい。この点に言及した日本メディアは少ないが、今後の日露関係を考える上で無視できないファクターだろう。その半面、ロシースカヤ・ガゼータ紙が領土問題を巡る2人の発言を載せていないのが気になる。政府系の新聞だけに、安倍首相訪露への期待を経済協力に集中させたいロシア側の意向が紙面から透けて見えるようだ。日経新聞によると、大統領は北方領土交渉を柔道になぞらえ、ペンと紙を使って説明。柔道場を模した四角を描き、「両国をもう少し真ん中に引っ張ってきて(改めて)始めるということだ」と、仕切り直しの意味を語ったという。これは4島と2島で争っている現状を改め、その中間で交渉しようということで、ロシア側も「2島プラスアルファー」を検討することを示唆しているように受け取れる。
森氏が最近テレビで3島返還論に触れたのも、2と4の中間で交渉しようと日本政府にアピールしたのだろう。プーチン大統領の意欲が領土問題解決の始まりであり、この時期を外しては解決のチャンスがないことを日本政府も肝に命じているはずだ。そのため、政府は解決可能な提案づくりに全力をあげるとともに、経済協力など幅広い日露関係の発展策を練り上げるべきだ。
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