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2013-02-22 00:00
野田の解散判断は真っ当だった
杉浦 正章
政治評論家
「バカの知恵は後から出る」というが、2月24日の党大会で決める民主党の党改革創生案なるものを読んで情けなくなった。このような党に3年3カ月余りも国政を委ねてきたことに慄然とせざるを得ない。総選挙惨敗の理由を「トップによる失敗の連鎖が期待はずれの政権というイメージを与え続けたため」と、全てを自分たちが選んだ党首の責任にしてしまった。野田佳彦の名前こそ挙げなかったが、野田の解散の判断がすべての原因だと言わんばかりの総括である。これではいまだに離党者が続出しているのもうなずける。確かに「失敗の連鎖」はあった。しかし、それは鳩山由紀夫、小沢一郎、菅直人につながる連鎖であって、野田になってその連鎖は断ち切られた。あえて党代表として責任を負うべき比率を言えば、鳩山が70%、菅が30%とみる。野田になって、はちゃめちゃの民主党政権が、ようやく“普通の首相による普通の政権”に戻ったのだ。鳩山はその暗愚さが未だに後を引いている。「トラスト・ミー」とブッシュをだまし、「最低でも県外」と沖縄住民をだまし、悪いのはそのだましたことをいまだに理解できないでいることだ。元首相といえば日本の“顔”となるが、その顔が恥の上塗りを重ねている。イランに行って利用され、中国に行って「尖閣は係争地」発言で利用される。あの紳士的な防衛相・小野寺五典が「国賊」と最大級の表現を使って非難するのも無理からぬ事である。
それでも本人は自分の愚かさに気付いていない。20日には沖縄で「普天間の海外移転が実現しなかったのは、米国の意向を忖度(そんたく)する外務省と防衛省のせいだ」と宣うた。これは各省の上に立つ首相たるものの心得すら理解していないことを物語る。鳩山は国中から馬鹿にされた首相であったが、菅は憎まれた首相であった。その発言が憎々しげであるからだけではない。3・11で生じた原子炉事故対策を指導せずに、“介入”して悪化させてしまった。危機の時の指導者の有りようを全く理解していなかったのだ。この鳩山=菅とつながる連鎖に、もう1人ぶら下がっていたのが小沢一郎だ。この人物ほど「盛者必衰」を物語る例は珍しい。選挙圧勝後は小沢ガールズを議員会館の自分の階に集めて悦に入り、まるで大奥の様相を呈していたものだ。いまは尾羽うち枯らして、回りに集まる政治家はほとんどいない。マニフェストに必要な16兆8千億円の財源を「政権を取ればいくらでも出てくる」と、大法螺(ほら)を吹いたが、すぐに馬脚が現れた。いまやマニフェストという言葉すら「不愉快」の代名詞として国民の間に定着したのだ。
その小沢が今になって野田の解散判断に疑問を呈している。「二百何十人も殺したのに、『これでよかった』と言うのは信じられない。どういう精神構造をしているのか」と批判。野田の解散の意図についても「自民党も過半数に届かないだろう。自分らもほどほど生き残れば、連立を組めるという打算だ。自民党と結ぶことを前提にして政治行動をするというのは、本当にむちゃくちゃで、邪な考え方だ。でも、そうとしか解釈できない。」と分析。野田が選挙後の自民党との連立を意図していたと断じている。この小沢の判断は、数だけが信条で生きてきた政治家ならぬ政治屋の判断であろう。それでは小沢が主張し、腹心の幹事長・輿石東にも言わせた衆参同日選挙で勝てたかと言うことだが、党内抗争を繰り返し、まるで政党の体をなしていない民主党政権である。衆参同日選挙をやれば、民主党と維新や他の野党との共食いはさらに拡大、民主党は衆参双方で大惨敗の連動を引き起こしただろう。前原誠司が参院選の見通しについて最近「おそらく自公が勝ち、3年間ねじれのない政権になる。民主党は10議席を上回るぐらいしか取れない」と発言しているとおり、冷静に見れば、いつ解散をやっても民主党は敗退する運命にあったのだ。あと半年も民主党政権の体たらくを見せつけられたら、国民の不満は衆参両院選挙に向けて爆発していたのだ。
首相という立場は、時には自分の支持基盤である政党の利害すら超越した判断を下さなければならなくなるときがある。その判断ができるのは政治家であって、政治屋ではない。小沢が「なんで解散をしたのか今もって分からない」と述べているのは、本当の大局を読めないからに過ぎない。筆者はかねてから「解散は政治の総合芸術」と書いてきたが、野田の解散ほど、困難で錯綜していた例を知らない。マスコミや評論家たちが軒並み読み間違え、任期満了選挙説を唱えるものまでいたことからもうなずける。野田の判断は大局を見れば決して間違っていなかったと断言できる。野田は、自らの政党のありさまを目の当たりにして、「この政党では国が持たない」という判断に立ち至ったのだ。加えて1内閣1課題で消費税増税も達成した。解散は政党間の公約でもあり、大局から見れば果たさざるを得ないと決断したのだ。そして野田の判断は、結果として正しかった。なぜなら自民党政権が、ようやく3年3か月の政治の泥沼から抜け出せるという希望をこの国に与えているからだ。野田は明らかに連立よりも自民党へのバトンタッチを意識して解散を断行したのだ。民主党の大敗は一にかかって欺瞞のマニフェストと、これを取り繕おうとした鳩山、管、小沢の目指した「衆愚の政治」にあるのだ。
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