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2013-02-19 00:00
北制裁の潮流に中国の孤立化目立つ
杉浦 正章
政治評論家
3回目の核実験をした北朝鮮に対して国際社会が一致した制裁措置をとれるかどうかは、中国の出方にかかっているのが実情だ。その中国は、煮え切らない姿勢をとり続けているが、米国を中心とする周辺国への制裁への協調呼びかけは進展しており、ある意味で中国が“孤立の危機”に瀕しているとも言える。外交筋によると、裏舞台における焦点の一つは、中国が「拡散に関する安全保障構想」(PSI)に参加するかどうかにあるという。大量破壊兵器、ミサイル及びそれらの関連物資の拡散を阻止するために、事実上の海上封鎖をしようというもので、これに中国が参加し、金融制裁と並行して実行されれば、かってない効果をもたらすものとみられる。しかし国営新華社通信は「北の核実験は米国に向けられたものである。米国、韓国、日本は政策が失敗したのであり、反省すべきだ」と、かってなく厳しい中国政府の姿勢を露呈させており、参加は容易ではあるまい。
一方、共産党総書記・習近平は「北京人」であり、その共通の特性は、一にも二にもメンツを大事にすることにあるといわれる。そのメンツに泥を塗ったのが北による第3回核実験だ。しかし国連安保理における中国の出方を見れば、北非難の報道声明に際して、強制力を持つ国連憲章第7章への言及を拒否するなど、これまで同様の北擁護の姿勢を見せている。中国外務省の副報道官・洪磊は、記者会見でも制裁強化の質問には一切答えないというありさまだ。せいぜい中国共産党機関紙「人民日報」系の国際情報紙「環球時報」が、16日付の社説で「中国とつきあう上での譲れない一線を北朝鮮に分からせる必要がある」と、習近平の苛立ちを代弁している程度である。米国は大統領・オバマが一般教書演説で「断固とした行動にこたえる」と発言した通り、新任の国務長官・ケリーが中心となって制裁への動きを加速させている。17日ケリーは就任して以来初めてロシアの外相・ラブロフと電話で会談、両外相は「挑発行為に対し、国連安保理で迅速な措置を打ち出すことを目指し、緊密に連携していく」という立場で一致した。もちろん、日本や韓国とは調整済みであり、ケリーは周辺各国を固めた上で、中国への本格的な働きかけを強めるものとみられる。
その焦点は、金融制裁とPSIにあるとみられる。いずれも実効性を持たせるには、中国の協力が欠かせない措置である。 米国が独自の金融制裁に踏み切ったとしても、カネの流れを完全に遮断するには、北朝鮮との金融取引の関係が深い中国の協力が必要だ。しかし、銀行取引禁止は、米国がミサイル発射を受けて安保理決議に盛り込もうとしたが、中国の反対で断念している。もっとも北に対する中国の“憤まん”は、何らかの行動として意志表示せざるを得ない側面もある。習近平はその外交の基軸を対米関係重視に置いていると言われ、国家主席への就任を控えて、最初から米国と対立するような姿勢は避けたいのが本音であろう。政府筋によると、PSIによる海上封鎖は米国が検討している安保理決議への挿入案の一つとなっており、中国の対応が注目されているという。自民党の元防衛相・小池百合子はテレビで「中国はPSIぐらいには応じるのではないか」との見通しを述べている。かねてから北朝鮮は、武器密輸に大連港などの中国の港を頻繁に利用しており、中国側も黙認している。いくら国連で決議しても、“ダダ漏れ”状態なのであり、中国の協力がなければ、海上封鎖も“ぬかにくぎ”なのである。
安保理決議に中国が賛成しないまでも、棄権するだけでも、効果は生ずるとみられる。米国は安保理決議のが実現しようとしまいと、独自の制裁として9・11テロを契機に制定された「愛国者法」を発動して、金融制裁を断行。またPSIを軸として海上封鎖に乗り出す可能性が大きい。首相・安倍晋三は、こうした中で22日にオバマと会談することになるが、国連決議と独自制裁の二段構えによる米国の方針に同調することになるだろう。中国を巻き込むことができなければ、事態は日米韓を中心に独自制裁に向けて動き出すことになるだろう。日本は北に対する制裁と同時に、尖閣諸島をめぐって中国と緊迫した関係にあり、首脳会談の基調は、かってなく対中けん制をにらんだ日米安保体制の強化・再構築に置かれるものとみられる。
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