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2013-02-18 00:00
「貧困」はテロの原因なのか
緒方 林太郎
前衆議院議員
昔から疑問に思っていることの中に「テロの原因」があります。よく見聞きするのが「貧困」がテロの原因であるという分析です。私はそもそも、このあたりに誤解があると思っています。単純な議論ですが、本当に貧困がテロの原因であれば、テロが起こるのはまずは最貧国と言われる場所でしょう。アフリカには最貧国と位置づけられる国が幾つかありますが、必ずしもそこがテロの巣窟になってるというわけではありません。むしろ、そこそこリッチな国の方がテロが起きやすいとすら言える面もあります。
そういう理屈に立つと、例えば、ODAの増減とテロの間に有意な関係を見出すことが本当に可能なのかと思います。多分、経済発展との関係で緩やかな有意性くらいは見いだせるような気もしますが、それは緩やかなものに留まるのではないかと思います。したがって、ODAを増やすことでテロ対策に貢献しているという論理立てをすることは必ずしも適当ではないと思います。私はテロの原因は「(何か大事なものを)剥奪されているという感情」だと思っています。その「大事なもの」が何なのかというのは時と場合によって異なりますが、いずれにせよ、その感情から来る「やるせないフラストレーション」を原因として、そこから「すべてを無差別に壊してしまおう」という動機が醸成されるのではないかと見ています。
その「何か大事なもの」というのが、イスラム世界では中東和平なのかもしれません。エルサレムのアル・アクサー・モスクは、その象徴の一つだろうと思います。先日、指名されたケリー国務長官が中東・北アフリカでのテロと中東和平問題には密接な関係があるといったステートメントをしていましたが、私は正鵠を得た議論だと思っています。勿論、その剥奪されているという感情の中には「貧困」という要素が入ってくるとは思います。貧困の状況に置かれていることへの不満が暴発することはあります。ただ、それがテロ行為に繋がるかというと直截的にはそういうことにはなりません。一般的な「不満の暴発」から「テロ」までの間には少し距離があります。その距離がどういうものなのかということはよくよく考える必要があります。
ましてや、「イスラム」そのものがテロの原因だと言わんばかりの議論は到底首肯することができません。そこは正確に言うべきであって、「イスラムが世界の中で置かれた状況(例:中東和平問題)」が原因であるということだろうと思います。それはイスラムの教義に「ジハード(聖戦)」が位置づけられているかどうかということとは別物です。イスラムは非イスラム圏の人からすると分かりにくいところがあるのは事実ですが、だからといって、すべて纏めてスケープゴートにしていては何も解決しません。今でも、テロと貧困、テロとイスラムを結び付ける議論は散見されます。それはとても分かりやすい単純化ですし、そこで思考停止することは楽な作業です。ただ、それは更にイスラム世界の疎外感を強調するだけで、物事の解決からどんどん遠ざかっているとしか思えないのです。
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