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2013-02-11 00:00
(連載)イスラエルの対シリア軍事作戦が意味するもの(3)
六辻 彰二
横浜市立大学講師
もともと、アサド大統領は父ハーフェズからその地位を引き継いだものの、父親と異なり、軍や情報機関などへの影響力は限定的でした。2000年代初頭の政治犯の釈放やインターネットの解禁といった「ダマスカスの春」と呼ばれた一連の自由化政策は、英国に留学経験もあるアサド自身によって進められたものの、軍幹部らのサボタージュによって頓挫した経緯があります。
それから10年以上経った現在、かつて体制の自由化を阻んだ軍幹部らは、自らの安全を保つためにアサドを人身御供にするインセンティブをもつ状況にあります。これに対して、軍によって支えられるアサド自身が、率先して交渉に向かうことは事実上困難です。ここまでの事態になると、一時アサドを受け入れることを暗示していたロシアも、その亡命を受け入れるかは疑問です。よって、アサドは今後とも「退陣」を受け入れないことで、現体制のもとでの身の安全を図ると考えられますが、それはいずれ、ますますアサドの首を絞めることにもなりかねません。いずれにせよ、アサド自身が反体制派との交渉をリードすることは想像しにくいのであり、それは逆に軍幹部らが離反した場合、全く孤立無援になる状況が生まれるとみられます。
1月27日に開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)では、シリアが「地中海のソマリア」になることを懸念する意見も出されました。アフリカ東部のソマリアでは、1990年代初頭以来、さながら日本の戦国時代のように、多くの勢力がそれぞれの大義を掲げて武装活動を展開し、国内が分裂する状況が続いており、これは武器や難民の流出により、地域一帯の不安定要因となっています。中東・北アフリカを追われたイスラーム過激派が、混乱するソマリアに流入していることも、状況の悪化を加速させています。
これまでの経緯に鑑みれば、シリアが「地中海のソマリア」になる可能性は大きいといえるでしょう。安保理における西側と中ロの対立が膠着するなか、それを避けることができるか否かは、シリア内部の変化によるところが大きいといわざるを得ません。そして、今回のイスラエルによる軍事攻撃は、少なくとも結果的には、まさにビリヤードボールのように、アサドを除く体制派と、過激なイスラーム主義勢力と距離を置くシリア国民連合に、少なからず交渉に向かうことにインセンティブをもたせる状況を生んだといえるでしょう。(おわり)
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