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2013-02-10 00:00
日本の政権交代のインパクト
池尾 愛子
早稲田大学教授
日中関係や中国情勢は、ヨーロッパでも関心がもたれているようである。日中関係が極めて緊迫した状況にあることは忘れてはいけないし、ましてや知らないふりをして国際交流を企画しようとしないでほしい。私自身、研究仲間の一人に質問を受けて、2月7日時点での情報を基にして、次のような主旨の回答をしたことを紹介しておきたい。その人は納得してくれたが、あくまでも私個人の観察と感覚的分析によるものである。
中国は政権交代や総選挙を恐れているのではないかと思う。日本では総選挙が行われ、政権交代が可能な状態なので、それが中国を不安定化することを恐れているのではないかと思う。中国が軍備を拡張し始めたのは2009年である。日本では2009年8月に民主党が総選挙で勝利し、9月に同党を首班とする連立内閣を組織した。2008年8月には北京オリンピックが、2010年には数カ月にわたって上海万博が開催され、東アジアには平和で友好的なムードが漂っていただけに、中国が軍拡を継続したのは極めて異様であった。振り返ってみて、中国政府は日本での政権交代をみて、不安に駆られ始めたようにみえる。
中国で軍拡が続き、漁船衝突事故など尖閣諸島をめぐっての挑発行為の頻度が増すのをみて、2012年12月の総選挙において、日本の有権者達は自民党に多数票を投じる決意をした。その結果、日本で再び政権交代が起った。中国の人々は12月の総選挙で日本の有権者達がなぜ自民党に投票したのか、その理由をよく知っている。つまり、中国側の行動に原因があって、日本人達は自民党を選んだのである。同時に中国の人々は中国の現体制下では政権交代が起りえないことを、現実問題として深く認識するようになった。私の観察によるが、日本での2012年末の政権交代は、2009年の政権交代以上に、中国の人々の心により大きくてずしりと感じられるようなショックを与えたようにみえる。
中国では「学問の自由がない」と言われている。中国では大学レベルの教育まで、中央政府がかなり統制しているようである。私は学術会議に招待された時にしか中国を訪問しないが、その時に感じられるのは、他分野に比べて、エネルギー問題(および環境問題)については研究の自由があり、日本研究についてもかなり自由がある、ということである。これらは、私が研究関心を持つ分野と偶然重なっている。以上がヨーロッパ人研究者に伝えた内容である。偶然かもしれないが、中国人研究者達からは「研究交流を続けましょう」と言われているので、研究者としての対話は続けるつもりである。
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