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2013-01-25 00:00
(連載)フランス軍の介入でマリ情勢は好転するか(2)
六辻 彰二
横浜市立大学講師
第二に、これに関連して、中国やロシアの立場があります。シリアの場合、外部の介入を拒絶する政府と、中国やロシアは以前から経済的・軍事的に深い関係があります。そのため、西側先進国による干渉を嫌う中ロは、「内政不干渉」の原則を盾に、国連安保理において武力介入に反対したのです。しかし、マリの場合は、もともとさほど親密なわけでなく、まして政府自身が介入を求めている以上、中ロに取り立てて反対する理由や口実はなかったのです。
第三に、フランスの意志の問題です。国連安保理常任理事国であることを除けば、フランスは米国などと比較して、グローバルな大国であるとはいえません。しかし、ことアフリカに関しては、フランスは強い影響力をもっています。19世紀の帝国主義の時代、アフリカ大陸を二分した勢力は英国とフランスでした。独立後も、フランス政府は毎年「フランス・アフリカ諸国首脳会議」を開き、フランス語圏アフリカ諸国政府と緊密な関係を保っています。軍事的にも、1994年のルワンダや、2000年のコートジボアールでの内戦に、フランスは単独で介入してきた歴史があります。中ロの譲歩を引き出すため、拒否権が発動されることを織り込み済みで介入を示唆したシリアのときとは、フランスの「本気度」が違うといえるでしょう。
第四に、武力活動を行っている組織の問題です。トゥアレグ人の独立を目標に、世俗的なナショナリズムを掲げるMNLAはともかく、それと協力関係にあるアンサル・ディーンは、イスラーム過激派「イスラーム・マグレブのアル・カイダ」(AQIM)とも繋がりがあります。AQIMは北アフリカ(マグレブ)諸国各地でテロ活動を行っており、1月16日にアルジェリアで日本人エンジニアが拉致された事件の首謀者モホタール・ベルモホタールも、これに関係しています。西側先進国だけでなく、中ロもまた国内のイスラーム系住民の独立運動と繋がるイスラーム過激派とは敵対関係にあり、さらにAQIMの場合は特定の国との結びつきはほとんどありません。いわば、その攻撃対象が主要国の共通の敵であることが、軍事介入を容易にしたといえるでしょう。
最後に、周辺国の協力です。西アフリカ諸国では、冷戦終結後の1990年代に内戦が頻発し、そのときの経験からECOWASには、近隣諸国の内戦に介入する権限が与えられており、各加盟国は予めそれに同意しているのです。ただし、実際には、資金や装備の潤沢でないアフリカ諸国にとって軍事介入はコストのかかる選択です。さらに、近隣諸国同士の関係もあり、そう簡単に介入の権利を行使することはありません。しかし、先述のように、ECOWASもまた、国連やフランスと足並みを揃えて、マリへ軍事介入する姿勢を示しています。西アフリカでは英語圏のナイジェリアと、フランス語圏のセネガルが反目することが珍しくありませんが、少なくとも合意の段階においては、今回の介入において両地域大国は協調姿勢を示しています。ナイジェリアなどでもイスラーム過激派による襲撃事件が頻発していることから、西アフリカ諸国政府にとっても、既存の国境線が変更されたり、イスラーム過激派が跋扈する状況は、好ましいものではありません。フランスが積極的に介入する状況が、周辺国の積極的な関与の呼び水となり、後者が前者をサポートするという循環が生まれているのです。(つづく)
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