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2013-01-10 00:00
(連載)2014年以降の米国のアフガニスタン戦略(3)
河村 洋
外交評論家
フレデリック・ケーガン氏とキンバリー・ケーガン氏が『ワシントン・ポスト』紙に示した見解は、イデオロギーの枠を超えて支持され、同紙編集局も12月2日付の論説欄にて、オバマ政権が同氏が提案する30,000人よりはるかに少ない兵員しか駐留させないことに疑問を呈している。また、アメリカはカンダハル、ジャララバード、マザリシャリフにも領事館を設置する計画であるが、この政策目的とアフガニスタン駐留米軍の大幅削減は矛盾する。さらに、アメリカがこうした兵員削減を実施する一方で、ヨーロッパの同盟諸国には充分な兵力を駐留させるように説得することは非常に困難である。
もう一つの問題は、治安が不安定であるにもかかわらず、カルザイ政権がアフガニスタン国内の外国駐留軍を削減したがっていることである。カルザイ政権と欧米の間の相互不信は解決されねばならないが、現状では外国駐留軍が一般市民を誤って攻撃する一方で、カルザイ政権はアフガニスタンの統治を改善できないままである。身代金目的の投獄は頻繁に行なわれ、麻薬や天然資源の密売は横行し、政府官僚は縁故主義にもとづき開発事業を独占している。その結果、国民は政府を信用しなくなっている。これらの問題に対して、カーネギー国際平和財団のサラ・シェイエス氏とフレデリック・グラール氏は、11月29日付けの同財団のウェブサイトへの投稿において「アフガニスタン治安部隊の兵員人数よりも質の向上に目を向けるべきだ」と訴える。
また、両氏はパキスタンがアフガニスタンのテロリスト達と背後でつながっていることについても問題視している。インドによる自国への包囲網形成を恐れるパキスタンの軍統合情報局(ISI)は、アフガニスタンの反乱分子を支援し、インドとアフガニスタンの提携構築を阻止しようとしている。ISIの活動による悪影響を考慮し、両氏は「パキスタンをテロ支援国家と認定して制裁を科すべきだ」とさえ述べている。きわめて皮肉なことに、ISIとテロリストの関係はパキスタン自身の治安にも悪影響を及ぼしている。パキスタン国内のタリバンはシーア派の住民を頻繁に殺害し、昨年11月25日に行なわれたシーア派の祭典「アシュラ」では、爆弾テロによって死者5人と負傷者90人を出している。
こうした状況に鑑み、2014年には首都カーブルに完全に治安権限が委譲されるアフガニスタンにたいし、国際社会は再び注目する必要がある。上述の政治的および軍事的な関与に加え、中央アジアやインド亜大陸をも含めたより広範な地域枠組が設立されねばならない。2014年以降のアフガニスタンの安全保障への対処を誤れば、アメリカとヨーロッパ同盟諸国がこれまで築き上げた成果が無に帰してしまうし、さらにアジアと中東の両地域におけるアメリカの戦略も破綻してしまうからである。(おわり)
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