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2013-01-09 00:00
(連載)2014年以降の米国のアフガニスタン戦略(2)
河村 洋
外交評論家
アフガニスタンにおいてテロとの戦争が生じた場合、アメリカ側の勝利は可能であるが、同国内の厭戦気運を乗り越えること、そして戦略的な調整が必要である。アフガニスタンの現状をみると、『タリバン』の著者アーメッド・ラシード氏は「世界中のアフガン・ウォッチャーの間で悲観的な見方が広まっている」と分析しているが、現地の駐留部隊では必ずしもそうした見方が受け入れられているわけではない。一例を挙げると、アフガニスタン南西方面司令官のマーク・ガーグナス海兵隊少将は「現在も戦闘は続いているが、過去3年間のヘルマンド州での事態の進展を見ていただきたい」と述べているし、『タイムズ』編集部は「タリバンは戦闘で失った地域を取り戻していない」という。しかし兵力の急な削減によって、これらの成果が無に帰してしまう恐れがある。このような状況に鑑み、ヘラートのイスマイル・カーン氏のような武装勢力の指導者は、欧米諸国の兵力撤退後の治安の空白を恐れ、自衛のための武装を強化している。
2014年以降のアフガニスタンに対処するには二つの問いに答える必要がある。第一は、どれだけの兵員を今後も駐留させるべきか、第二は、アメリカの対アフガニスタン政策のアプローチにはどのような質的な変化が求められるのか、である。しかし、これらの問いに答える前に、アメリカ国内に広がる長期にわたる戦争に対する厭戦気運と、オバマ政権が中東よりもアジア重視の姿勢をみせるなか、なぜアメリカ軍が引き続きアフガニスタンに駐留すべきなのか、についての理解が不可欠である。 アメリカの戦略家達が推奨するのは、11月24日付けでフレデリック・ケーガン氏とキンバリー・ケーガン氏が『ワシントン・ポスト』紙に投稿した論文で示された戦略で、同論文にはアフガニスタンへの米軍駐留継続が必要な理由が明確に語られている。
両ケーガン氏は同論文において「リビアのベンガジで起きたようなテロ攻撃を避けるためにも、充分な兵力をとどめるべきだ」と主張する。また、「アフガニスタンでのアメリカ軍の存在がパキスタンでの対テロ作戦を容易にするが、南アジアでのテロリストの拠点はパキスタンの連邦直轄部族地域、アフガニスタンのクナル州およびヌーリスタン州といった両国の国境地帯に集中している。アメリカがそのような人里離れた地域で地上基地なしでテロリストと戦うには、武装無人航空機、パラシュート空挺部隊、有人航空機、の三つが考慮されるべきである」という。しかし、前二者は航続距離と兵士の安全な帰還という問題点を抱えているし、三番目の有人航空機は飛行速度が高すぎるために攻撃対象の特定が難しい。いかなるハイテク兵器を利用しても、地上基地の重要性は全くなくならないのである。
さらに、地上基地は不慮の攻撃から防御されねばならず、両ケーガン氏は「上記目的を達成するためには米軍30,000人の駐留が必要だ」と主張する。また、「敗北主義や『少数精鋭』戦略ではテロリストが勢いを盛り返すだけで、アメリカの安全保障にはより深刻な大惨事が起きかねない」という。また、この問題について、外交問題評議会のマックス・ブート上級フェローは12月24日付の『ワシントン・ポスト』紙への投稿で「充分な地上基地なしにヘリコプターによる作戦を敢行するには、空中給油が必要になるが、そうなると任務の遂行にはかなりの制約となる」と指摘している。(つづく)
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