ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
本文を修正後、投稿パスワードを入力し、「確認画面を表示する」ボタンをクリックして下さい。
2012-12-16 00:00
外交円卓懇談会「日中対話:日中関係の見通し」に参加して思うこと
池尾 愛子
早稲田大学教授
12月14日(金)に、季志業中国現代国際関係研究院(CICIR)常務副院長ほか3名のCICIR訪日代表団の一行を迎えて、日本国際フォーラム、グローバル・フォーラム、東アジア共同体評議会の3団体共催による第87回「外交円卓懇談会」が緊急開催され、「日中対話:日中関係の見通し」についての意見交換が行われた。その対話の内容は、いずれ日本国際フォーラム等の主催団体から発表、紹介されると思われるので、ここではそれを紹介することは割愛するが、それと整合的と思われる範囲で、明るい未来を志向し、様々な分野での活発な日中交流を再出発させる方向に向けて、私の個人的な感想を書き留めさせて頂きたい。
既に、中国における日本の民間ビジネス(特にリテール部門)は力強く再開にこぎつけている。中国人が買い物をする地元の店で働いている人々、そこで販売される製品の製造工程に関わっている多くの人々は、中国人である。中国は「世界の工場」であるだけではなく、「世界の市場」にもなりつつある。中国の識者達もこうした社会的変化を認識し始めているようだ。人々が消費生活を楽しむことはよいことである。江戸時代の思想家の二宮尊徳は(借金が重なった時には特に)倹約の必要性を説いたけれども、快適な暮らしをいったん体験すれば、人はそれを維持するために、懸命に働く傾向があることも示唆した。生活の向上に乗り切れなかった人には、真面目に勤労することのメリットを体得してもらうことが有益なのである。彼の時代、人々がみな余裕を持って生活を楽しむためには、相互扶助が必要とされた。明治期以降、彼の教えを受け継いだ人達は相互扶助だけではなく、教育や訓練が必要であると考えて実践していったといってよい。
日中間で構築されてきた「戦略的互恵関係」のもと、日中間では省エネルギーや環境総合フォーラム等の取組みが、着実に進んできた。日本の経済産業省と中国の国家発展改革委員会が取りまとめる形で、日中間では、合意された省エネルギー・環境に関する協力案件が実施に移されてきた。第6回フォーラムは昨2011年11月26日に北京で開催され、過去最大となる51件の協力案件が合意されたほか、省エネルギー・再生可能エネルギーの利用協力の更なる展開に関する覚書を締結した。今年は早くも8月8日に第7回フォーラムが開催され、47件の協力案件が調印され、成功裏に終了した(http://www.meti.go.jp/press/2012/08/20120806006/20120806006.html)。その後はどうなっているのであろうか。省エネ、環境対策での協力については、現在も中国は依然としてこれを切実な必要としている様子である。
今回の「外交円卓懇談会」では「戦略的互恵関係や、経済分野での交流だけでは、不十分である」との意見があった。ならば、10月に予定されていたものの、延期されたままの交流行事や学術会議の予定を組み直して、開催していくことが必要であろう。実際のところ、多くのイベントを延期にしたまま、新しい交流プロジェクトを組むのは、困難である。交流の企画を作成し、実行に移していく人たちは、日中交流に情熱を注いできた人達である。そのためには治安を確保する必要があるということであれば、ぜひとも治安を確保していただきたい。日中交流のために心血を注いできた人々の努力を無駄にしないでほしい。私自身も、10月に北京を訪問する機会を逸したことは残念である(9月21日付けの本「議論百出」欄を参照願いたい)。「外交円卓懇談会」終了後、李副院長から「中国現代国際関係研究院にも来て下さい」との言葉をいただいたので、私は次の北京訪問の機会をとても楽しみにしている。
さらに将来を見据えるとき、若者達の相互交流はとても大切である。残念ながら、来年、日本から中国に留学する若者の数は減少しそうである。ゼロにまで減らないのは、日中交流の重要性を認識し、この困難を乗り越えていきたいと決意を固めている若者がいるからである。他方、中国から日本への留学を希望する若者の数はさほど減少しないかもしれない。ここで切実なお願いがある。だからといって、反日教育を強化したり、抗日テレビドラマの放送回数を増加させたりしないでほしい。日中双方の若者達にさらにマイナスになる影響を与える恐れがあると思われるからである。中国の経済成長が、世界の人々の生活向上に直結することを願ってやまないのである。
投稿パスワード
本人確認のため投稿時のパスワードを入力して下さい。
パスワードをお忘れの方は
こちら
からお問い合わせください
確認画面を表示する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム