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2012-12-12 00:00
総選挙終盤へ、これで国民の信を得られるのか
尾形 宣夫
ジャーナリスト
衆院選は終盤に入る。12党が入り乱れる今回の選挙ほど焦点が定まらない国政選挙はなかった。マニフェストそっちのけで罵り合い、悪口の言い合いである。有権者にとっては争点はおおありなのだが、政党にとってはまるで「争点なき」選挙戦のようだ。既存の政党に対する有権者の離反は、現状に対応できなくなった政治と行政に対する「反乱」と言っていい。政治の体たらくは行政の沈滞を招き、いつの間にか行政を担う官僚が政治を動かすという、悪しき流れが定着してしまった。
狡猾な官僚は正面切って政治を壟断することはない。羅針盤を持たない政党に、いつの間にか進むべきレールを敷いて、政治家が無意識のうちにそのレールを走ってしまう形をとる。気が付けば、官僚組織の土俵の上で政治を演ずるというわけである。民主党政権が目指した政治主導が無残にも崩れてしまい、国民の信を失った野田政権が野党攻勢に開き直って解散カードを切った挙句の選挙なのである。官僚にとって「愚直な政治家」ほど扱いやすいものはない。官僚の周到な根回しで、政治家本人が知らず知らずのうちに問題の重要性を思い込んでしまえば、後は歩き始めた政治家をしっかりサポートすればいいのだから。
周知のように、野田政権の1年半は見事な「財務省主導」だった。その成果が「社会保障と税の一体改革」である。消費増税は政権内の反対を押し切って自民、公明両党と連携、3党合意にたどり着いた。消費税の引き上げを公約とする自民に「近いうちの解散」を匂わせてすり寄り、増税を決断しかねる公明を追い込む形で合意に導いた。一体改革、消費増税路線を裏で演出したのが財務省である。野田政権はこの路線を政権の分裂を覚悟の上で忠実に実行したに過ぎない。もちろん当時の野田首相には、屋台骨が弱体化した民主党政権の「次ぎ」を見越した大連立への戦略があったことは言うまでもない。尖閣、竹島をめぐる中国、韓国との領土問題は、北方領土問題に加えてわが国の外交力を試す世界政治の刺激的な挑戦である。
日本が世界政治で発言権を持つ拠りどころは日米同盟なのだが、その同盟の核心となる沖縄基地は普天間飛行場移設問題が膠着状態となっているため、米側の不満は大きい。米国の世界戦略はアジアに軸足を移した。強大化する対中国戦略はTPP(環太平洋経済連携協定)と日米同盟の深化なのだが、対米関係の修復を願う野田政権は国論を二分するTPP問題で思い切った決断をできずにいる。日米同盟についても、沖縄の基地問題を凝縮した形の普天間飛行場移設に加えて垂直離着陸機オスプレイの配備で沖縄県民の猛反発を招き、にっちもさっちもいかない状態のままである。普天間問題に続くオスプレイ配備の紛糾で政権と沖縄県との間にでき亀裂は大きくなるばかりだ。普天間問題は1972年5月の沖縄の本土復帰、さらには2000年の沖縄サミット開催という壮大な政治イベントに原点を見る。現在の基地問題の紛糾は、その原点を振り返らずして問題の本質を見極めることはできない。
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