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2012-11-22 00:00
(連載)オバマ政権は対イラク政策を再考せよ(1)
河村 洋
外交評論家
今年のアメリカ大統領選挙では、外交政策は主要争点とはならず、オバマ氏とロムニー氏の間ではイラクとアフガニスタンはほとんど議論の対象にならなかった。しかしイラク情勢はイランとシリアに直接影響を及ぼす。またリビアでのベンガジ米大使攻撃に鑑み、アル・カイダの復活を注視する必要がある。問題はこうした安全保障上の課題だけではない。
イラクのレジーム・チェンジは中東の若者達を触発し、それがチュニジア、エジプト、リビアでの「アラブの春」につながり、イラクは日本とドイツのように民主主義のショー・ウィンドーになるものと期待された。アメリカは両同盟国を忘れたことはないはずだが、イラク問題が同大統領選挙にてほとんど議論の対象とならなかったのは、なぜだろうか?オバマ政権はイラクから駐留軍を撤退させたが、同国でのテロとの戦いと安全管理の行方は中東どころかサヘル・アフリカにまでも大きな影響を及ぼすし、中東に対する安全保障政策が脆弱では、オバマ政権のアジア移転政策にも陰がさす。したがって、西側多国籍軍の撤退後のイラクで何が起こっているのかを見過ごしてはならない。
まず、イラクと近隣諸国の安全保障情勢について述べたい。昨年12月の米軍撤退に際してバラク・オバマ大統領が「独立、安定、自立したイラク」を宣言したのと裏腹に、事態は逆の方向に進んでいる。アメリカン・エンタープライズ研究所のフレデリック・ケーガン部長と軍事問題研究所のキンバリー・ケーガン所長は10月15日付『ナショナル・レビュー』誌への投稿にて「オバマ政権は安全保障面においてイラクを信頼できるパートナーに育て上げていない。昨年末の撤退後にイラクに残った米軍要員はわずか150人で、イラク軍とは訓練も戦闘も共に従事することはない。その結果、米・イラク両国によるテロ対策での協調は急速に衰え、アル・カイダが復活している。撤退以降はイラクのアル・カイダの前線組織であるイラク・イスラム国による襲撃が増加している。スンニ派である彼らは、モクタダ・アル・サドル師が率いるシーア派民兵との間の宗派抗争を激化させている」と指摘する。
両氏はさらにイランの影響力の増大にも言及している。イランはイラクの領空を通ってシリアのアサド政権に軍事物資を供給している。アメリカと安全保障で強力な協力関係を築いていないイラク空軍では、イランの侵入を撥ねつけるにはあまりに脆弱である。イランの影響はイラク当局にも浸透しており、アメリカがマリキ政権に対し、シーア派の過激派の身柄を引き渡した際に、イラクの司法当局は、自国の国内法に規定されているような民兵組織の解散も行なわせずに同者を釈放してしまった。イラクでの米軍のプレゼンスが強固であれば、2008年の戦略提携合意が企図したように、アル・カイダとイランを牽制できたであろう。しかしオバマ政権は米軍にイラクで抑止力になって欲しいというマリキ政権の要請を拒絶した。(つづく)
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